トムプロジェクト

2025/09/26
【第2089回】

週明けの今日は暑さが戻ってきましたが、やはり秋の風が猛暑を和らげている感じがします。一昨日、演劇群「走狗」の戦友から主宰者であった関口瑛氏の訃報の知らせがありました。おいらの青春の一ページでもあった仲間がここ数年で5人も旅立ちました。皆、貧しかったけれど芝居に対する思いは誰よりも負けない志を抱いていました。主宰者の瑛さんは早稲田小劇場を見切って「走狗」を立ち上げました。主要メンバーは元早稲田小劇場に在籍したメンバー、おいらは旗揚げの二作目から参加し7年間疾走し続けました。最初は早稲田にあったクリーニング屋さんの二階の空間で公演していたのですが、当時テント芝居で話題になっていた唐十郎率いる「状況劇場」に刺激を受けテント芝居をやることになりました。日本全国津々浦々、トラックにテントを乗せ、その片隅に固まるように違反乗車しながら、それはそれは苦闘の日々でした。でも、芝居をやれる、そして待っている人が居るという思いから乗り越えることが出来ました。そんな集団をまとめる瑛さんは大変だったと思います。集まった連中が個性プンプン、一筋縄ではいかない曲者揃いときたもんですから、知性溢れる瑛さんもさぞかし頭を悩ましたに違いありません。旅の途中での喧嘩は当たり前、過酷な旅行程のなかで高熱にうなされ「もうダメです...置き去りしてください!」なんて戦時中の兵士みたいなことを言う者もあり、芝居よりも劇的なシーンに彩られた旅公演の連続でした。

そんな戦友が亡くなる度に寂しい気もしますが、あの日あの時、共に酒を酌み交わし演劇に向き合いキラキラ輝いた面構えは今でも鮮明に覚えています。そして戦友が叶えることが出来なかったことを命ある限りやれればと思っています。

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1973年「走狗」メンバー
前列中央が瑛さん

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