トムプロジェクト

2026/10/26
【第2244回】

週明け早々、またもや台風の影響で東京も朝から雨が降っています。カンカン照りでも、長雨でも、ましてや台風が加われば農作物の価格に直に影響が出てきます。そろそろ鍋の季節だというのに白菜の高騰でキャベツでの代用なんてニュースが流れていました。来年4月から食料品の消費税1%引き下げの論議が国会で始まりましたが、この止むことのない物価高の状況の中、果たして効果があるのかしら?2年間限定というのもなんだかその場しのぎの政策にしかみえませんね。何度も言いますが、この国の政治家のどなたにも未来に対する展望がなさ過ぎて、希望が持てず忸怩たる思いです。

伝説のテレビドラマ「北の国から」今月、遅まきながら初めて観ました。倉本聰さんを追悼して放映された「北の国から'83冬」。1981年にスタートしたこの番組、おいらは30代半ば風来坊でスペインに住んだり世界のあっちこっち漂ったりで、日本のテレビ番組ほとんど興味なく観てませんでしたね。日本よりも世界の発展途上国のエネルーギーに興味を抱いていました。倉本聰の描く世界もなんだか甘っちょろく、大自然をバックに情緒で訴える点がその頃のおいらにはなんだろう?なんて感じていました。今回、観た感想は役者の個性溢れる演技に惹かれました。特に笠智衆さんの凛とした佇まいに、あらためて表現者としての鏡であることを再認識した次第。田中邦衛さんみたいな役者さんももう二度と現れない時代になりましたね。そして、少年時代大好きだった東映時代劇のスター大友柳太朗さんが出演していたのも嬉しかったです。

この混迷した時代、表現の世界も正解などあるはずはなく模索の連続、何が面白くなにが面白くないのか?世界の混乱と同時進行してる状態ではないでしょうか...

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そろそろ色づき始めました

2026/10/23
【第2243回】

10月1日より23年間住み慣れ親しんだ渋谷の事務所から、新宿歌舞伎町に事務所を移りました。新宿歌舞伎町と言えば、世界に冠たるダークで眠らない町として名をなしてきました。トムもまさか職種を変えたのでは?ホストクラブ、キャバクラなんてことはないでしょうね!なんてよからぬ噂も流れたんじゃないでしょうか...まさか、そんな大胆な発想はまだ持ち得ていませんから安心してくださいませ。実は、トムの始まりは、もともと新宿4丁目からのスタートでした。まだ新宿高島屋がなかった頃、その近くで6疊の狭い事務所からスタートしました。言ってみれば原点からの再スタートといったところかな...正直言って、演劇界も他の業種と同じく、人件費、材料費などなどの相次ぐ高騰でなかなか以前と同じ形態での芝居創りが難しくなってきました。諸々が上がったからチケットを高くすればなんて意見もありますが、この世情を考えるとそんな気持ちになれません。おいらも芝居の入場料は¥5000までと決めていたのですが、この異常なる物価高で少しは上げざるを得ませんでした。今や。¥8000~¥12000など当たり前の状況になるにつれ戸惑いを感じている次第です。

なんといっても、新宿はいまも活気溢れた町です。このエネルギーを頂きながら又あらたなトム・プロジェクトが生まれることを期待しています。

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秋の空4

2026/10/21
【第2242回】

今年の野球も日米ともどもナンバーワンを決める季節となりました。おいらのなかでは今年は残念ながら終了宣言。応援していたライオンズ、ドジャースが共に敗退、あとは客観的になんとなく観てしまうだけ。今年のライオンズ、まあ良くやったと言えばそうなんですが、やはり監督の采配に疑問が残りました。監督の選手の好き嫌いがあまりにも激しすぎ、二軍で頑張っている人達に希望を感じさせない点が第一、次に勝負感があまりにもなさ過ぎ、そして何よりもベンチで写る監督の表情が冴えない。勿論、大将ですからいちいち感情を露わにするのもどうかと思いますが、少しはエンタメの世界ですし魅せる工夫と、選手に刺激を与える為にもアクションが欲しいところです。若い選手にどれだけやる気を起こさせるか!この監督の不感症的な振る舞いのおかげで大いに不満なシーズンでもございました。負けても一生懸命に応援しているファンのためにも来年こそと思ってはいますが、こればかりは勝負の世界、幕が開かないとわかりませんことよ。

大リーグのドジャースもあれだけお金投資すれば勝って当たり前と言われながら今年はダメでしたね。大谷選手だって、これまでの二刀流による身体的な疲労の蓄積があるのでそうは上手くいかないのは想定済みなはずですが、周りがやんややんやの大騒ぎ。そして、このチームの監督の采配も疑問点が多々ありました。それにしても、大リーグの面白いところは、どんなに弱小球団であっても思いがけない力を発揮して強力なチームを倒すスリリングな試合展開と個性あふれる選手たち。その点、日本の野球はまだまだかな?といいながらも来年も大リーグに移籍する選手がチラホラ、今年甲子園を沸かせた投手がいきなり大リーグに堂々と挑戦の名乗りを上げるなど、野球界も変革の時期に来ているのかもしれませんね。

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再開発中の新宿西口

2026/10/19
【第2241回】

先週の週末は吉祥寺シアターで、あやめ十八番第十九回公演「三英花煙夕空」タイトルからしてなんだろうなんて思いますよね。<さんえいかけぶるゆうぞら>って呼ぶんです。ここからして曰わくありげな仕掛けたっぷりです。この劇団、昨年初めて観て、なかなか面白いことに挑戦してるなと気になっていました。古典な世界にモダンなものを持ち込み、エンタメ性もたっぷり盛り込みながら貧乏たらしなく絢爛豪華に展開していく様に正直お金どこから出てるのかしら?とプロデューサー目線で観ていました。

今回も芝居が始まる前に、舞台に飾った舞台美術を一般観客に解放しまるで美術館の様相を呈していました。芝居の内容も骨董商を主人公にした話、ミステリアスな流れにナマの不可思議な音楽と能舞台を思わせる役者の動き...前回の芝居と比較すると少し高尚な感じがしたのだが参加者全員がより斬新で画期的な作品を生み出そうとする意気込みは十分に感じられました。

演劇において美術が果たす役割は、芝居の性質を百八十度変えるくらいの大きな要素でもある。1960年代から70年代、演劇の大きな転換点であったアングラ芝居。新宿花園神社にテントをぶっ建てて生活の匂いを残した廃材で装置を組み立て、ラストにはテントを開け放ち神社の借景を取り込む手法で話題を呼んだ「状況劇場」。芝居のポスターにはまだ無名であった横尾忠則を起用し観客の好奇心を煽るには充分であった。そして前衛的な美術ともに演劇実験室を標榜した「天井桟敷」などなど。

今回の芝居は、まさしく現代アートと演劇のコラボレーション。こうやって何事にも恐れることなくチャレンジ精神溢れる演劇人がどんどん出てきて欲しいと切に願う次第でございます。

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開演前の舞台

2026/10/15
【第2240回】

昨日は新宿文化センター大ホールで、島田歌穂さんの「Musical,Musical,Musical!」vol6を観てきました。歌穂さんのパワーで満員の会場は2時間圧倒されていましたね。1974年のデビューですから52年間、ミュージカルを軸に、ストレートプレイにいたるまで幅広く表現として培ったものを十分魅せてくれました。歌は勿論、この出し物で登場するミュージカルの歴史を紐解きながら講義するコーナーでの、島ッ田教授の歌を交えながらの話術も演技者としてのツボをわきまえた名調子でありました。その中でウォルト・ディズニーが創った世界平和に関する曲を歌う前に「トラさん、プーさんわかってますか?」と場内に問いかけると大きな拍手がおこりました。この厄介な両巨頭、アートよりも私欲にからんだ金儲けに奔走しているので美しい音楽も雑音に聞こえるのかも知れませんね。

この日特別ゲストに招かれた浦井健治さんとの時空を超えたデュエットもなかなかのもの。若手に正面から対峙する姿に歌穂さんの歌に対する限りない愛を感じました。おいらは普段、ミュージカルは関係者が出演しているとき以外はほとんど観ないのですが、こうやってミュージカルの名曲のシャワーを浴びると、さすがに歌のチカラを感じますし、今なお多くの人達が高い入場料を払ってでも劇場に足を運ぶ所以がわかります。

そしていつも感心するのが、旦那様であるピアニスト兼音楽監督である島健さんとの相性。勿論ご夫婦なので当然なんですが音楽的なセンスがぴったんこ、二人のしっとりとしたデュエットで締めるのがこれまたお洒落でございました。

来年初春、トムの「モンテンルパ」での渡辺はま子役今から楽しみです。

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秋の空3

2026/10/13
【第2239回】

8月19日、東京の猛暑の中、幕を開けた「沼の中の淑女たち」、北は北海道から南は九州まで巡演し10月10日に石川県金沢市で無事千秋楽を迎えることが出来ました。7月28日の稽古初日から含めると、なんと73日間事故もなく完走できたこと本当に感謝あるのみです。キャスト、スタッフの誰一人として気を緩めることなく、演劇を楽しみにしている人達にベストな芝居を届けるべき責任を日々感じながら心身を律して過ごされた結果だと思っています。そして、いくら本人が自覚していても思わぬことから病、事故に遭遇することだって十分あり得ます。プロデューサー稼業も、いつよからぬ情報が来るかも知れないと戦々恐々の毎日でした。勿論、そんなことも想定しながら腹をくくってはいますが、朝に目を覚ました瞬間から公演の期間は思考の半分はその心配がよぎること必死です。

おいらはトムの会社を始めたときから、東京、大都市だけではなく地方でなかなか芝居が観られない未知なる観客との出逢いを欲していました。芝居を観すぎてどこか手垢がついた都会のお客さんよりも、素直な感性で目をキラキラ輝かせながら楽しんでくれる地方のお客さんの嬉しそうな表情を拝見する度に、改めて演劇の素晴らしさを感じることが出来たことも事実です。今は亡き劇団民藝の名優、宇野重吉さんが72歳にして一座を率いて全国津々浦々、村や町に舞台を届けた気持ちよくわかります。最後は肺がんになりながらも酸素ボンベを抱えながら幟を立てたトラックで巡演する姿に芝居の原点を見る思いがしました。

今回も「沼の中の淑女たち」に駆けつけてくれた皆さん本当にありがとうございました。

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秋祭りのでペッタンコ

2026/10/09
【第2238回】

ONEOR8公演「台所の女たちへ」を観劇。今年トムで上演した「沼の中の淑女たち」を作、演出した田村孝裕主宰の作品です。なんと言っても田村作品にはあの向田邦子さんの匂いがプンプンします。相当、彼女の世界に惹かれるものがあると思います。今回の作品は、平成28年、地元の名家であるフタムラ製作所三代⽬・二村儀之助の通夜から開幕。戦前から軍需産業の下請けとして貢献した一族。集まった一族の会話から見えてくるこの家の人間模様と歴史、そして家族の間でさまざまな問題が噴出し押し問答が続く。向田作品には何ともいえない情念が哀しくも残酷な時間として行き交うのだが、田村作品は人間の持つ滑稽さを全面に押し出し笑いに変えるドラマツルギーで観客楽しませてくれていました。そして、トムでもお馴染みの音無美紀子さんの気品溢れる存在感はさすがでした。

それにしても、このところの田村作品にハズレがない。シャイな田村さん、結構な人間観察と相当な読書量の日々を過ごされているのではなかろうか...演出も女優陣に信頼があると聞いています。演出家もいろんなタイプがいます。頑なに己の主義主張を一貫して通す御仁、揉めることを良しとしない柔和で優しいアットホーム型、一人の役者をスケープゴートとして一点集中ダメ出しに拘り他の役者に見せつけるタイプ、有名な役者にはダメ出さず無名の役者にお説教するなんとも嫌なタイプなどなど。そりゃ、演出家だってニンゲンですから人それぞれでございます。

この日の下北沢スズナリには、トムにも出演して頂いた岡本麗、松金よね子、小野武彦さん、そして村井國夫さんもご来場。舞台も客席も華やかな一日でした。

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秋の空2

2026/10/07
【第2237回】

老舗の劇団民藝公演「証」を観劇。作・演出は中津留章仁、トムでも今年「チョークで描く夢」を上演しました。彼が俄然注目されたのが2011年に東日本大震災と原発事故を正面から取り組んだ「背水の孤島」。この事故から半年後に3時間を超える舞台を提出し、震災で生じた様々な問題点と原発の是非を観客に問いかけた衝撃的な作品であった。今の演劇界で常に現在に直面する諸問題をストレートに演劇に取り入れる希有なる作、演出家である。最近彼が拘っているいるのが過疎に直面する地方の生態、土砂崩れで公民館に孤立し右往左往する若者達を描いた「黄色い叫び」、豊かな都市と地方都市の格差を題材にした「分岐点」「対岸の絢爛」、中津留の故郷、大分県津久見市で建設業を営む一族の物語「堕ち潮」これは多分本人の家族縁者の話であるに違いない。作家もここまでたくさんの戯曲を書いてきたのだが、やはり己の生まれ育った土地への検証を兼ねて原点に立ち戻ったのではなかろうかと推測する。その後、安芸高田市をモデルに市長と市議会の対立を描いた「掟」この市長、のちに東京都知事にも立候補し落選、なんだかんだと話題になったんだが所詮キワモノだったんでしょうね。そんなすれすれの作品を創るのも中津留らしいかな。その後、高知県大川村をモデルにダムで水没した村民たちの和解を描いた「埋没」。そして今年は北海道浦幌町の地域活性化に奔走し再生に取り組む群像劇を描いた「わたしの町」。おいらも九州を舞台にした作品を数多くプロデューサーしてきましたが、同じ九州人である中津留章仁が地方の現実を見つめ創作する姿勢に大いにシンパシーを感じます。

今回も地元を舞台にした作品、民藝のベテランと若手を上手くいかしながら過疎化が進む町への問題提起にひるむことなく挑みました。

この困難な時代、真摯かつ己の信念を貫きながら演劇人としてトラッシュマスターズを主宰する彼に秋波を送りたい。

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秋の空

2026/10/05
【第2236回】

先週の土曜日は、新宿紀伊国屋ホールで今年28回目を迎える石橋幸「僕の叫ぶ声」に出かけてきました。石橋幸こと通称タンコさんは、新宿ゴールデン街で半世紀以上「ガルガンチュア」というお店のママさんでもあります。おいらも当然半世紀以上通い続けている常連の一人です。タンコさんもともとは舞台俳優であり、10人も座れば満杯になる店には作家の中上健次、暗黒舞踏の創始者土方巽、おいらが大好きな映画監督森崎東などなど一癖も二癖もあるアーチスト、そして右翼から左翼に至るまで幅広いジャーナリストが夜毎朝まで酒を酌み交わし喧々諤々の論争に明け暮れていました。酒を楽しんで飲むどころかしっかりとした理論武装と、あらゆるジャンルにわたる知識なくしては留まることが出来なかったお店でした。そんなゴールデン街も今や、世界各国の情報誌に東京のディープな場所として紹介され9割が外国観光客で占領される街に様変わりしました。

ところでこの日のコンサート、タンコさんも82才、さすがに肉体的な衰えはあるものの持ち前の凛とした精神性を堅持しながら2時間弱の舞台を無事相務めました。全22曲すべてロシア語で歌うところがなんとも彼女らしい...中上健次が「石橋幸は、ロシアの歌をロシア語で歌い、あまりにも深くロシアの人と土地に共振れする。」と言わしめた。

最近、身近な人の死に立ちあっているだけに、この日もタンコさんが来年もこの場で歌う現場に立ち会えることを願って劇場を後にしました。

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来年も歌ってね ♪

2026/10/01
【第2235回】

渋谷のイメージフォーラムで、今年4月に亡くなった金井勝さんの映像を観てきました。金井さんとは今は亡き同人誌「鷽」を発行していた中村信昭さんの紹介で縁を頂きました。金井さんは、劇映画やドキュメンタリーといったジャンルを自由自在に行き交いながら独創的かつ刺激溢れる作品を創りあげてこられました。カメラから覗く対象に対し彼独特の感性、信念基づいて円転滑脱に発想された作品群は、日本の実験映画、個人作家としての先駆け的な存在であり、その後の多くの映像作家に多大な影響を及ぼしています。今回観た「聖なる劇場+スーパードキュメンタリー前衛仙術」も十分楽しませて頂きました。自宅の庭に生息する生き物に対する深い愛情と感謝の気持ちが画面から溢れんばかりこぼれ落ちていました。そして、時折発する金井さんの臍下丹田から発する命の叫び声が、なんとも可愛く美しかった。89年の生涯、自分に嘘をつくこともなく己の生命の在り処をしっかりと見つめながら生き抜いた金井さんにお疲れ様でしたと言いたい。

帰りに、これまた昨年亡くなった児玉徹がやってたスペインレストラン「ラ・プラーヤ」があった店の前を通ることになった。おいらが住んでたスペインアンダルシア、サロブレーニャ村にひょっこり現れ、すっかり気に入ったこの村でアパートとバイト先を紹介し、その後帰国し店を構えて、それなりの人気店に仕上げた何とも憎めない男でした。表面的には強気を前面に出してはいたものの、実は照れ屋で心優しき九州男児でした。

嗚呼、この歳になると先輩、友人が次からへと黄泉の国に旅立ってしまう。おいらもそのうちだとは思うのだが、まだまだ勉強しなきゃならんことが多すぎますので、そちらの旅は予定しておりませんがな。

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金井勝の万華鏡

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