トムプロジェクト

2025/12/19
【第2122回】

今年も残すところ13日となりました。歳末の風景様々でございます。中国政府の日本への旅行を控えるようにと警告しても相変わらず街中にはリッチな中国の人達を見かけます。駅の待合室の中で人目も憚らず大声での携帯電話。異国に来てその国の良き風習に触れ学ぶ人も居るかと思えば、好き勝手に振る舞う輩もいます。旅人のマナーでその国の文化の程度が露呈しちゃいますので周囲の気配を感じながら行動したいものですね。

一方、東京の電車の中での光景、満員電車の中に80歳過ぎのご婦人が疲れ切った様子で優先席の前に立っていながらも、携帯に夢中になった振り、来た途端居眠りを装う若者、こんな若者を見る度に、この国の未来に悲観を感じざるを得ません。「おんどりゃ、なに考えとるんじゃ!」一発かましたいところですが、なにせこのご時世、ブスリと刺され命を落としてしまったら一巻の終わりでございます。後期高齢者であっても命ある限り、何とかこの国のために少しでもお役に立ちたいとは一応思っているもんですから...

今日の朝のニュースで政府関係者が「日本も核を持たなきゃ!」なんて発言したことを流していました。まさかとは思いますが、何だかじわじわとあの大戦前の状況が形成されつつあるということも事実です。先日も飲み屋で24歳の若者が公然と軍拡大賛成の話をしていることを耳にしました。己が銃を持って戦地に赴き敵陣と相対し殺戮を実行する光景を想像しての発言か否か?本も読まないスマホ命の輩の頭の中、本当に心配でございます。

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師走の風景

2025/12/17
【第2121回】

昨日から、来年の初頭に上演する「風を打つ」の稽古が始まりました。この芝居の初演は2019年、その後全国公演含めて86ステージを重ねてきました。それだけ観たいという方々が居て、この時代に必要な作品であったのだと思っています。それにしても、ふたくちつよし作品の需要の多さは群を抜いてます。彼の作品の底辺に流れているのは平和への願い、環境に対する厳しい視線、家族の在り方、これらのテーマを教条的に描くのではなく普遍的に捉えてる点だと思います。実は、平易な言葉で紡いでいく台詞の展開こそが手間暇がかかり時間を要するものです。そして台本が出来ても、そこに血肉を加え情感を込める役者のチカラがなければクオリティーの高い作品にはなり得ません。勿論、舞台美術、照明、音響、演出部の強力な後押しも必要となってきます。

今回の芝居のテーマにもなっている水俣病、来年の5月1日で、病が認定されて70年になります。12月2日に映画「MINAMATA―ミナマター」で水俣病の悲劇を世界に伝えた写真家ユージン・スミスを演じ、プロデューサを務めたジョニーデップが胎児性水俣病患者である坂本しのぶさんと対面した際、坂本さんは不自由な身体で「水俣病は終わっていない」と訴えました。

演劇に携わる者として、常に弱者の立場に立ちながら社会に発信できる作品を創り続けていきたい!年の瀬の今日この頃、改めて今日の稽古初日の本読みに立ち会いながら己に言い聞かせた次第でございます。

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階段を降りれば、そこはjazzの世界

2025/12/15
【第2120回】

先週の土曜日は、「エル・スールを映画にするったい」の会合に顔を出しました。今年12回目の会です。西鉄ライオンズの神様、仏様、稲尾様と言われた鉄腕稲尾和久投手の命日に合わせ毎月13日に集まることになったそうです。トム・プロジェクトの芝居「エル・スール~わが心の博多、そして西鉄ライオンズ」を観劇し「是非、映画化したい!」と名乗りを上げた武正晴監督を筆頭に、この呼びかけに賛同してくれた人たちが十数名集まり映画化に向けて情報収集、資金集めの相談を喧々諤々話し合っています。

映画を創ると言ってもなかなか実現が難しい昨今、これだけの人たちが毎回集まってくれるには、やはりあの昭和の時代に貧しいながらも人々が必死に生きる姿に共感したに違いありません。電車に乗れば90%の人が他人に興味も示さずスマホに一点集中、家族、恋人と食事に行っても会話がなくそれぞれがスマホと対話している姿、公園の広場に集まる子供たちも無言のままゲームに夢中なんて姿を見せつけられたら、あの昭和の人間臭さに惹かれるのかもしれませんね。

おいらも、今回の映画化の原作になる「我が心の博多、そして西鉄ライオンズ」のあとがきに書きました。「この本に登場する人物は皆、活きいきとした体温を蓄えている。その体温を感じながらボクもまた、夢とロマンと冒険心という三種の神器を手に入れた。この困難な時代を乗り越えるキーワードは、やはり人の心の在り方であり、他人を思いやる体温の温かさであると思う。」

そんな思いが込められた映画、勿論おいらも観たいです。

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うつくしく交る中や寒椿

2025/12/12
【第2119回】

おいらはスペインに住んだ経験もあり、ふとスペイン料理が食べたくなります。スペインでは休日に家族で集まり、パエリアを囲んでのんびりした時間を楽しみます。庭や広いテラスにはパエリアを炊くスペースが確保されている所もあり、パエリアは家族団らんの象徴的な食べ物ですね。てなわけで先日、国際パエリアコンクールに3年連続で日本代表として出場し、しかも優勝したという店に行ってきました。一日3組しか予約できないご夫婦でやっている店、確かに一品、一品丁寧に作られた料理と味わい深いワインで十分堪能したんですが、肝心のパエリアがおいらの口には合いませんでした。水分が多く、食べ終わった後のパエリア鍋に焦げ付いた米をヘラでそぎ落としながら食するラストの楽しみが無かったのが大きな原因かな。それと料金かな...スペイン料理はあくまで家庭料理の範疇だと思います。食材にしても調理過程も含めて庶民の食べ物、これちょいと高いんじゃない?なんて感じさせるお店はどうかなと思いました。

今日から一段と寒くなりましたね。そして又もや今日再び、東北、北海道で地震が発生、そんな状況でありながら原発の再稼働が柏崎と泊で進んでいます。確かに原発に頼らざるをえない点は理解できますが、14年前の東日本大震災のことをもう忘れたのか?と唖然たる思いがします。あの地震で故郷を失った人たちの慟哭は誰しもが共有することではなかろうか...

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お口に合いますかな?

2025/12/10
【第2118回】

昨日は、新国立劇場で「スリー・キングダムス」を観劇。イギリスの劇作家サイモン・スティーヴァンスが2011年に本国で上演した作品です。イギリス、テムズ川に浮かんだ女性の変死体の発見からドラマは始まる。犯人を追って二人の刑事がドイツ、ハンブルグ、エストニアへと追跡していくストーリー。現実と幻想とを交互に繋ぎながら一筋縄ではいかない展開に芝居を観慣れていない観客は戸惑うかもしれない。発せられる台詞もエグい。国が運営する新国立劇場だからこそ可能な挑戦的・革新的な作品。作家が物語と戯曲の関連性についてこう述べている。「物語は欲望から生まれ、登場人物が何を求めているかを理解することから始まる。欲望の具体的な性質を見極めることは、政治的・感情的・哲学的な洞察を構築する鋭い方法である」う~ん...含蓄ある言葉ではあるがこれを視覚化、しかも限られた舞台上で伝えることは至難の業でございます。

今回の舞台にトム所属の森川由樹が出演していました。昨日の舞台でもキレのある芝居でシーンを盛り上げていました。新国立劇場演劇研修所第6期を終了し、2013年にトムの「百枚めの写真~一銭五厘たちの横丁~」でデビューして12年。ここ数年の彼女の演技は目覚ましいものがあります。今年8月に上演した「鬼灯町鬼灯通り三丁目」でも難役を繊細かつ大胆に表現してくれました。一人の俳優が時間を重ね成長する姿を見続けることもプロデューサーの楽しみのひとつですね。

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まだまだ魅せます

2025/12/08
【第2117回】

トムの芝居も終え、先週の土曜日は劇団桟敷童子「一九一四大非常」を観劇。いつものように手作り満載の舞台と、魂込めた演技に観客は皆温かい拍手を送っていました。

今回の設定は、大正3年12月15日に発生した「三菱方城炭鉱ガス炭塵爆発」。671人、それ以上の死者を出したと言われる事故。当時の事故状況の資料を丁寧に読み、筑豊出身である東憲司さんが作、演出。過去にも何本か炭鉱に関する芝居を創った彼にとって己の出自は生涯切り離すことが出来ないテーマではなかろうか。

炭鉱と言えば、おいらにとっても同じ福岡にあった三池炭鉱も含めて幼少のころから身近な存在であった。今でも鮮明に覚えているのは今から60年前、1965年夏、三池工の甲子園初出場初優勝は、労働争議(三池闘争)や、大勢の犠牲者を出した炭塵爆発事故で沈んでいた大牟田の地に希望の光を灯した。当時の監督は、ジャイアンツの原辰徳の父親であった。盆踊りでもお馴染みの炭坑節は、野球場でも良く見かけたものだ。嘗ての西鉄ライオンズが後楽園球場(現東京ドーム)で試合をしたときには必ず炭坑節の大合唱を背にして応援したものである。福岡県人にとってはいくつになっても「炭鉱」は心の故郷の一部ではなかろうか。

昨日は、大学ラクビー対抗戦の優勝を決める明治対早稲田の伝統の一戦をテレビ観戦。

主審レフリーの稚拙なジャッジにもめげず明治が接戦を制しました。4年間という限られた時間の中で青春を燃焼できるなんて、なんと幸せな若者たちだろう...決して、学徒動員なんてことにならないよう政治家の皆さん頼みまっせ!

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今年最後のスーパームーン

2025/12/05
【第2116回】

「五十億の中でただ一人」12月3日に無事千秋楽を迎えることが出来ました。公演中、一番恐かったのがインフルエンザ感染による公演中止。メール、電話が鳴る度にドキッ!こんな日々はとても心臓に悪い。この難関を見事に突破してくれたキャスト、スタッフに唯々感謝でございます。今回の芝居、演劇評論家の方々も来てくれました。観劇後のY氏の一文一部を紹介します。

 

「反戦」をテーマに、衒いもなければまわりくどい物言いもない愚直なまでの舞台。しかし、だからこそ今の不気味な時代を逆照射している。タイトルの「50億」は地球上の人々の数。一人ひとりに50億分の1のかけがえのない人生がある。それを一瞬にして奪うのは愚かな指導者が号令一下始め、それに熱狂する国民が行う戦争。「人間ひとりの命は地球より重い」と言って人質と犯人を交換した首相がかつて日本にもいたが、「人間ひとりの命」など鴻毛(こうもう)より軽いとばかりに戦争準備をする首相もいる。戦争は指導者に躍らされて国民が熱狂するのだというのも今の日本を見れば、戦時を追体験しているようなもの。

こんな芝居が上演されているうちはまだ人間を信頼していいと思う。

 

日本のみならず、世界でも多発している大規模火災、この光景を見るたびに戦禍に陥った時のことを彷彿とさせます。そしていまだ続くロシアによるウクライナへの侵略戦争、ガザでの7万人の死者を超える惨状、世界は確実に危うい彼方へと突き進んでいるような気がします。

2025年11月24日のテレビ朝日の報道によると、台湾有事に関する世論調査で、33%の人が「戦争は必要」だと回答したと報じられています。

戦争という化け物の実態を想像できない人たちがこれからも増えそうで無気味なニッポン...しかも、若い人たちに多いと聞くとますます憂える日々でございます。

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平和でこその風景

2025/12/03
【第2115回】

「五十億の中でただ一人」、今日が千秋楽です。一ヶ月前にはチケットが完売し、連日多くのお客様で劇場は賑わっています。お客様のあたたかい視線で役者も励まされ、ステージを重ねるごとに上質な芝居に仕上がっていく様を日々感じている幸せなプロデューサーでございます。と言っても、なかなか厳しい観客がいらっしゃるのも事実です。おいらが理解する範囲と随分食い違う意見を朗々と喋られることも。勿論、一つの見方として参考にして頂きます。人生いろいろ、感性も好みも違って当然、だから生きていることは面白い...何ごともこの世の中すべからく正解はありません。ことアートに限って言えばとてつもなく無限に近いシロモノ。とどのつまり発信する側としては己を信じて表現するしかありません。そして世間に受けいられなきゃ当然淘汰されるだけのこと。トム・プロジェクトが30年間も続けられたことは、演劇というジャンルで必要とされた証拠だと一応は自負しているつもりです。

今回の赤坂レッドシアターに通う道、連日好天に恵まれ気持ちの良い散歩道でした。少し遠回りになったんですが地下鉄青山一丁目で下車し、左に赤坂御用地を見ながらカナダ大使館、高橋是清翁記念公園、草月ホール、伝統工芸青山スクエア、とらや本店、豊川稲荷東京別院の側を歩いているとカルチャーの空気が漂う感じがしてとっても爽快でした。

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劇場への道

2025/12/01
【第2114回】

「五十億の中でただ一人」4ステージ無事終えることが出来ました。インフルエンザも想定外に増え、日々戦々恐々のなかキャスト、スタッフ健闘してます。初日二日目と少し不安な面もありましたが三日目からがらりと変わるところが芝居の面白いところです。芝居はナマものですから微妙な間合いで全く違う芝居になってしまいます。勿論、おいらは毎日観ているのですが、そのあたりの様は手に取るように伝わってきます。しかし、これだけは舞台で演じている役者さんを信じて見守るしかありませんね。

終演後、お客さんがおいらに駆け寄り「良かったね!」なんて声を掛けてくれる日は確かに上々の出来、素通りする日はイマイチなのかな?と思ったりします。そりゃ人間ですから良いときもあるし上手くいかないときもありまっせ...でも、お客様は貴重な時間とお金を払って来てくれているんですからベストな状態でお観せしてこそプロの仕事でございます。

終演後の帰り道、公園で夜の美術展をやっていました。港区が主催し、おしるこを振る舞い多くの家族連れで賑わっていました。カルチャーにどちらかというと手薄なこの国にあってこうした取り組みを目にするとなんだか正直嬉しくなっちゃいますね。

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赤坂・高橋是清翁記念公園

2025/11/27
【第2113回】

日々当たり前のように食べている卵、物価が上昇していても大して上がらず庶民の味方ともいえる唯一無比の食品です。そんな卵、実は苛酷な状況の中で生み出されているんです。1羽あたりB5判サイズ以下の空間に埋め込むバタリーケージで閉じ込められ運動量も抑えられ、喧嘩しないようにクチバシを切断するのも当たり前。そんな生産効率主義第一の養鶏場を変革すべき会社を立ち上げたのが鹿児島県曽於市にある「サテライツ」。この養鶏場で平飼いされてる鶏は羽の汚れを落とす砂浴びも、地面をつついて餌を探す動作も、眠るときに止まり木に登るのも、鶏本来の習性、欲求に基づく行動らしい。経営者である川原嵩信さんの嘗ての希望である「自然に近いかたちで鶏たちに生きて欲しい」という願いから生まれた。更に、一般的な採卵養鶏業者は産卵率が下がる2歳前後で廃鶏とし食肉処理する廃鶏を引き取り産まなくなっても最後まで飼うシステムを作り上げる。そもそも歩いたり、羽ばたいたりしたことがない鶏たちは平飼い場に放り出されてもすぐには歩きだせない。止まり木にも登れない。それでも次第に本来の姿、行動を取り戻し、2,3カ月くらいで羽も生え放牧場を駆け回る姿になるとのこと。そして3日に1度には卵を産む様になるそうだ。正直、経営はなかなか困難だと思いますがこんな人たちが居る限り人類もまだまだ希望が持てそうです。この世の中、本当におかしくなっています...もう一度しっかりと大地を踏みしめて!

「五十億の中でただ一人」本日、初日でございます。

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バラとメタセコイア

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