トムプロジェクト

2026/03/04
【第2151回】

おいらにとっての第二の故郷でもあるスペインに旅したいと思いつつも、コロナ騒ぎが終わったらロシアのウクライナへの侵攻、そして今度は新たな中東戦争になるかもしれないトランプの蛮行。こんな状態のなか、異国の地でのんびりと過ごすなんてことは気が進まないのは自明の理。そんな時は、本を読みながら著者と一緒に旅する気分に浸るのが一番です。

高田晃太郎著「ロバのクサツネと旅する」を読了。ロバと一緒に旅する発想が愉快ではありませんか...元新聞記者だけあって文章が平易でありながら、実は微に入り細に入り旅先で出会った人たちとの交流、そして自然が残る田舎の風景を見事に捉えている。何せロバの食べるものが大地に生えている草であり、ホテルに泊まるなんてことは出来ないので、自然がそのまま残っているところにテントを張って泊まるしかない。時折、そんな光景に温かい視線をおくる地元の人たちとのやりとりにほっこりしてしまう。地元の食材をごちそうになったり、温泉に入れてもらったりと、ほんまもんの人間の交流の大切さを実感させてくれる。

今の世の中の、やれ経済、出世、思想の対立、慌ただしいSNSなどなどからも離れ、ただ道草を食うだけの相棒クサツネとともに、日本を歩いた著者の発想、行動こそが混迷極める世界を救う思想かもしれませんね。

本の中でいろんな表情を見せてくれるクサツネ君の写真も彩りを添えてくれます。

現在は北海道南部・八雲町でロバのクサツネと一緒に塩づくりに取り組み、この塩をロバに乗せて北海道から千葉まで行商の旅を満喫しています。いやいや、こんな人達が増えると戦争なんか起こりませんことよ。

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ロバのクサツネ君

2026/03/02
【第2150回】

よもやイランまで、しかも最高指導者ハメネイ師まで暗殺してしまうとは...トランプの「力による平和」が国際社会での歯止めがきかないどころか許される状況に唖然としています。北朝鮮も含め、アメリカを敵対視している国はより軍拡に走ることは目に見えています。

隣国に独裁政権が存在する日本でも、この事実を拠り所としてますます軍事予算は増大し、兵器産業がこの国の利益となるとして、殺傷能力のある武器輸出認め、今後、輸出拡大を目指す考えだとのこと。いよいよ日本でも武器商人が市民権を得る時代になりました。

こんな状況で、いよいよもって日本外交の舵取りが難しくなりました。アメリカべったりの日本も、このトランプの行動のあおりをくってしまう危険性は十分にあると思います。

世界第三次大戦の実現性を帯びつつある今、一人一人が平和のためになにをすれば良いのか真摯に向き合わなければえらいことになっちゃいますね。

以下の文はウクライナに暮らす少女が書いた手記です。

 

「平和」という言葉を聞くと、サイレンのない穏やかな空を思います。

想像するのは、子どもたちが落ち着いて学校に足を運び、外で遊んでいる様子です。

私にとって、平和とは、大好きな人たちがそばにいて、誰も心配しなくてもいいことです。

ウクライナに平和が訪れてほしいと、心から願っています。

「戦争」という言葉を聞くと、悲しい気持になります。厳しい時を過ごしている人びとのことを考えてしまいます。

最後に善が勝つと、私は信じています。

 

何度でも言います。地球にとっての癌細胞である生きものであるニンゲン、ほんまにあほですな。

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曇天に咲く河津桜

2026/02/27
【第2149回】

傘寿、80歳になりました。よくぞここまで生きてこられたなとおいらも驚いています。1945年8月15日の終戦を待たず、8月9日にソ連が満州に攻め込んできました。そのときおいらは母のお腹の中でびっくりしたのでは...その後、地獄のような逃避行の末、1946年の2月博多に引き揚げ誕生しました。今は亡き母の話によるロシア人による蛮行の数々のなかで、よくぞこの世に生を受けたことは奇跡だと思っています。

戦後の貧しい時代ではありましたが、博多での暮らしは西鉄ライオンズと映画があったからこそ頑張れました。少年時代は新聞配達、おきゅうと、納豆売り、中学時代には郵便配達が加わり、高校時代は土方の仕事もしました。苦労?いやいや楽しい日々でした。仕事の現場で人の生き様を見させて頂いたお陰で、その後の生きる智恵を授かったのでないかと思っています。底辺に生きる人達からは人間の価値は、お金でもなく地位でもなく、困っている人達にどれだけ優しく手助けしてあげられるかの大切さを学びました。

東京での長年の生活も、悩んでいる暇がないくらいの充実した日々でした。大学時代は学生運動のまっただ中、授業があまりなかった分、新宿で日毎繰り広げられる多種多様なカルチャーにどっぷり浸かっていました。その狂乱の現場はもう二度と体験できないくらいの心荒ぶる出来事の連続でした。そんな刺激を受けて芝居の世界に首を突っ込む羽目に陥りました。芝居をやっているのか、酒を飲んでいるのか、これもまた芝居中毒に嵌った集団ですから怒濤の日々でした。

そんな日本での生活から離れ、32歳の時にスペイン一人旅を決行しました。浅草で買った千円の浴衣と森進一、鬼太鼓座のカセット、ラジカセを持参しての大道芸の旅。この珍道中が面白く、その後世界のあちらこちらを放浪しました。

40歳の時、帰国し落ち着いたものの何かしなきゃたべていけませんがな?といろいろバイトで食いつないでいたのですが、結局のところ好きな芝居の世界に行き着いた次第です。

トム・プロジェクトがここまでやれたのも、おいらのハチャメチャ人生をなんとか生き延びれたのも、すべて出会った人達のお陰です。

これからも、「俺が俺がの我<が>を捨てて、お陰お陰の下<げ>で生きる」を忘れず、一応90歳という目標に向かって、のんびりと過ごすつもりですのでよろしくお願いします皆の衆。

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梅も咲き
年をかさねて
夢も咲く

2026/02/26
【第2148回】

国会の論戦が始まりました、といっても衆議院の議席のほとんどが与党という有様ではなんだか勝負は決まったような雰囲気。奈良のおばちゃんもそんな余裕から、選挙で勝ち抜いた仲間に3万円のプレゼント。前回もやっとこさ念願の首相になった鳥取のおじさん、喜びのあまり10万円をくばりヒンシュクをかったばかりなのに...ほんまにこの政党は反省なんか糞くらえ、お金の感覚がまったくもってマヒしていますね。そんなところに、まるで人気投票であるかのような選挙に、こんな結果を出してしまった選挙民の責任も重いですね。勿論、野党第一党の訳の分からん動きに嫌気がさしたのも理解できますがね。

それにしても物価の上がり方は天井知らず、おいらもたまにスーパーを覗きに行くんですが、皆さん少しでも安く買いたいのか店員さんが割引シールを貼ってくれるのを今か今かと待っている姿を見るたびに切実な思いに駆られます。半額シールなんかが貼られるとたちまち完売。その商品を手にした表情の何と晴れやかなことか、こちらまで嬉しくなってしまいます。

議員バッジつけて自慢げな皆さん、一度はそんな景色を政治に活かすためにも是非ツアーを組んで自分の目でしかと感じ取ってくださいな!

昨日今日と久しぶりの恵みの雨、春を待ちわびていた樹々も大喜び。まさしく三寒四温、それを繰り返しながら待望の春がやってきますね。

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何話してるのかな?

2026/02/24
【第2147回】

2008年に公開されてから17年ぶりに上映されたターセム監督「落下の王国」を鑑賞。構想26年、撮影4年、13の世界遺産、24か国のロケーション。まったくもって規模が違い過ぎる映画です。魔法のような美しさとめくるめく幻想の世界に迷い込んでしまう展開。
時は1915年。映画の撮影中、橋から落ちて大怪我を負い、自暴自棄になり病室のベッドに横たわるスタントマン。そこに現れたのが木から落ちて腕を骨折した入院中の5才の少女。動けないスタントマンは自分に代わって、自殺するための薬を薬剤室から盗んで来させようと、思いつきの冒険物語を少女に聞かせ始める。視覚的に絶妙なストーリーで、五感を楽しませてくれる映画ですね。アーティスティック・ディレクション、コスチューム、写真、メイク、編集...要するに、すべてが観客にいまだ感じたことがないような体験をさせる工夫が随所になされています。映画は単なる娯楽ではなく芸術であるべきだと主張が少々強すぎるきらいもあるかなとも思います。万華鏡のような美しさに圧倒されて人間ドラマが希薄になっている気もします。実際、そんなにお金をかけなくとも心の琴線に触れる作品は数多く見てきましたから...でも、ここまで徹底してやってくれると拍手を送りたくなりますね。終盤のサイレント映画にたいするオマージュ的なシーンは、ニューシネマパラダイスのラストシーンを彷彿とさせました。

己の夢想を映像美に託して、徹底的に貫く活動屋魂を映画館で感受できる幸せな一日でございました。

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落下の王国

2026/02/20
【第2146回】

青木理著「百年の挽歌 原発、戦争、美しい村」読了。著者はコメンテイターとしてTVで権力者に対し辛辣な発言も多く、最近はメディアに登場することも少なくなった。昨今、権力者に厳しい意見を発言すると、やれ左翼ジャーナリストと決めつける輩が増えてきたのだが、本来ジャーナリストたるものとしては当然のことである。なかには御用評論家として政界を徘徊している者も少なくないが、聞いていてもどかしさを感じる。

今回の青木さんの著作、10年をかけて東日本大震災の被災地である飯館村に住む家族を取材しての話である。震災によって避難を余儀なくされ102歳で自ら命を絶った古老の話から物語は展開します。この家族の一人は嘗ての大戦で硫黄島にて戦死しています。そして追い打ちをかけるかのような不幸が続きます。

この負の連鎖、いずれも国策を実行する人達による将来の設計図の貧しさが大きな要因であり、この国の未来を案じての出版だったと思います。登場する人々の淡々とした日常と、不用意に壊されてしまった日常のなかにある不条理が鮮明にルポルタージュされ、一気に読めるのも、これまで自分の目と足を駆使してきた著者の地道な足跡があってのこそだと思います。史実・データを検証し、時系列とあわせて何度も推敲しながら書き上げた今回の本、多くの人に読んでもらえると少しはこの国の未来も明るくなるのではないかしら。

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春の予感

2026/02/19
【第2145回】

昨日、埼玉県深谷市民文化ホールにて、深谷虹の演劇鑑賞会主催による「風を打つ」大千秋楽公演に行ってきました。1月15日から始まった中国地方での公演、激しい雪が降る中なんとか25ステージ、無事完走することが出来ました。とくに降雪が激しかった山陰地区での公演実施にいたる苦労は大変なものがありました。そんななか会場維持、集客に労を尽くして頂いた鑑賞会の皆様には唯々感謝。勿論、この状況で体調管理も含めて事故もなく公演を成立させてくれたキャスト、スタッフのみなさんにもお疲れ様でした。

今回の公演で、鑑賞会の何名かの方に「40年間、見続けたなかでもベスト1です...」なんて言葉を頂けるだけでも、この芝居を企画し長年上演した甲斐があると同時に、これからもこの世の中に必要とされる作品を創っていかなければと感じた次第です。

先の「モンテンルパ」も含めて、1月~2月での公演を終え、来月3月1日からは風間杜夫ひとり芝居カラオケマン「さすらいヘルパー」の稽古が始まります。芝居はいつの時代でもこの世を映し出し、観客に手応えを感じさせ、心の琴線を振るわせるものを創造する責任があると思います。もうこれでいいや...なんて諦めから芝居の現場が衰退していく経緯をなんども見てきました。

いや、いや、いくつになっても心休まる暇なんてございません。もう一度、気を引き締めてもう一踏ん張りといきましょうかね。

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大千秋楽

2026/02/17
【第2144回】

今の時代の映画女優、いや男優も含めて突出している俳優はエマ・ストーンではないだろうか...初めて見たのが2016年アメリカで公開されたミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」、女優志望の役を感情豊かに活き活きと演じ、この年のアカデミー賞主演女優賞を受賞。次に観た2023年に公開された「哀れなるものたち」で腰を抜かすほどの体当たり演技にはほんまに驚きました。しかも監督ヨルゴス・ランティモスとの共同企画ときたもんだからこの方の意識の高さに脱帽。そして今回の「ブゴニア」、再び監督とタッグを組んだ新作。本作のオリジナルは2003年の韓国映画「地球を守れ!」カルト的な作品を、かなりスマートにブラッシュアップした作品に仕上がっている。聞いたことがないタイトル「ブルゴニア」とは?古代ギリシャで雄牛の死骸からミツバチが自然発生するという信仰に基づく儀式から転じて、「死から新たな生命が生まれる」という不条理な変化のことだそうだ。冒頭と最後にミツバチが登場するのも象徴的。

物語はサスペンスタッチで進行していくのだが、エマ・ストーンの演技にくぎ付けされてしまう。まさしく身体を張ってという言葉を通り越し、命を懸けて立ち向かう姿に胸迫る思いだ。

この作品には環境破壊への警鐘もはらんでいる。事実、ここ数年地球温暖化の話が一向に改善されないし、自国第一主義の権力者による不条理な戦争...ラストの画面に映し出されるのは、もはや地球はこうなっても仕方が無ないと思わせる壮大な絶望で締められている。

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如月の曇天

2026/02/13
【第2143回】

先週、今週と2本の芝居を観劇。1本目は、宮原奨伍プロデュースつかこうへいを知る旅「熱海殺人事件」。新宿紀伊國屋ホールを借り切って5日間の公演。個人で興行するには大変な負担だったと思います。しかも宮原さん、もう一つの演し物「売春捜査官」にも出演しているのでこれまた大変。彼が尊敬してやまないつかこうへいの世界を表現者として勝負すると同時に、人間が生きることにフォーカスし続けた作家に対するオマージュを込めての企画だったと思います。その意気込み宮原さんの立ち姿で十分伝わってきました。速射砲のように語られるつか台詞を劇場に足を運んでくれた観客に、心の鍵を外し蓋をあけ感じて欲しい...つかこうへいが今だにあちらこちらで上演する所以が分かる気がします。

2本目は、糸あやつり人形一糸座による「人造人間の憂鬱」、作・演出は劇団桟敷童子の東憲司。今から50年前に、代々木にある小劇場で初めて見た「江戸糸あやつり人形結城座」の記憶は今でも鮮明に覚えています。この劇団は今年で旗揚げしてから390年になります。役者と人形が同じ空間で競演したり、人形遣いが人形を使う傍ら生身で役を演じたり、まさしく人間と人形が劇構造の中で格闘する様は観客の想像力を喚起するに十分なものがあります。

今回の一糸座さんは、結城座九代目孫三郎の孫、結城一糸によって旗揚げされた劇団です。

古典芸能と現代を疾走する劇団が融合し、新たな作品を創ろうとするエネルギーが舞台上で錯綜していました。繊細な糸を操り、人形に命を吹き込もうとする役者の一挙手一投足がなんともスリリングでもありました。

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1935年の新宿駅
(木村荘八による油彩画)

2026/02/12
【第2142回】

選挙、雪降る日に友人「高橋美智子を偲ぶ会」が市ヶ谷で開催されました。1986年に、当時はまだ食前酒程度の認知しかなかったシェリー専門のレストラン「しぇりークラブ」を銀座の一等地にオープンした関係でNPO法人シェリー・ソサエティ・ジャパンの主催でした。

ミーコとは今から45年前に演劇群「走狗」で出会いました。政治、文化を含めて混沌とした中、テントを担いで全国各地でアングラ芝居に没頭した日々。ミーコは当時アングラ演劇界の中ではヒロインとして絶大の人気がありました。小柄でチャーミングでありましたが、芝居の話になると一筋縄ではいかない論客で、なみいる男どもを圧倒的熱量で論破していた記憶があります。

そんなミーコが何を思ったか、おいらが好きなスペイン関係の店をやりだしたというので早速出かけてみると、なんとスペイン放浪中に寝酒として愛飲していた「フィノキンタ」がならんでいるではないか!ミーコとはまさしく以心伝心、ここでまた同志的親近感を感じた次第です。その後、この店も話題になり多くの知名人が来るようになり人気店として大繁盛。ミーコの勘も芝居同様なかなかのものでしたね。

それにしても「走狗」の仲間が次から次へとあちらの世界に逝っちゃいました。今頃、主宰者であった関口瑛、舞台美術の島次郎、昭和天皇を演じた田島恒、音楽担当の伊深宣と一緒にミーコの音頭で「サルー」(スペインでの乾杯)の掛け声でシェリーでも飲んでるかもしれませんね。

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ミーコにサル―

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