トムプロジェクト

2026/08/10
【第2216回】

先週の土曜日は、久しぶりに上野に出かけました。トラッシュマスターズ第44回公演「TOKYO SLUM」を観劇。上野から入谷方面に10分ほど歩いたところに「上野ストアハウス」という小劇場があるんです。東京にはあちらこちらに雨後の筍のように小劇場が存在するのですが、この下町にオープンするのにはかなりの冒険だったと思います。この厳しい社会状況下において小さな芝居小屋に足を運んでくれる人達は減少しています。正直言って、制作する側も観る側もギリギリのところで現場を成立させている。

今回の芝居は、新宿に西口に集まる生活困窮者をテーマにした芝居。便利になった世の中で、どんなに働いても生活が楽にならない現実が日々報道されています。先日も夏のボーナスが平均100万なんて書かれていましたが、このお金を手にする人は大企業、官公庁の人達。日本の企業の99.7%が中小企業です。この人たちのなかでどれほどの人達が潤沢なボーナスをもらっているのか?介護、病気、子育て、離婚、失業などなど様々な問題を抱えながら死にものぐるいでなんとか社会の中で帳尻を合わせようとしてもなかなか追いつかない現状。そんな人達が大都会の片隅でひっそりと暮らしていますが、そこからもはみ出してホームレスにならざるを得ない現実。実際、今日も新宿の街には、この酷暑のなか日陰を求めて何人ものホームレスの人達を見かけます。寂しさを紛らわすため鳩に餌を与えくつろぐ人、前に空き缶を置きお金のカンパを待つ人、やる気もなくただ寝そべっている人などなど。

バブルがはじけた頃には、新宿西口の地下広場は職を失った人達の生活の場でした。時折、彼らを追い払うために来る都職員との壮絶な小競り合いも何度も目にしました。

今回の芝居を観ながら、フィクションである芝居が現実さえをも超えていく予感がしました。

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タカサゴユリ
花言葉~無垢、純粋~

2026/08/07
【第2215回】

昨日は広島に原爆が投下されて81年、いつものように平和記念式典が行われていました。

しかしながら、歳月を重ねるごとに世界は真逆の方向に突き進んでいます。唯一の被爆国の日本のメッセージは果たして世界の為政者に届いているのでしょうか?核軍縮の会議ではお互いに非難の応酬、共同声明も出せないほどの末期的症状。それに輪をかけたみたいにこの国のトップ、そして防衛大臣までが非核三原則に疑問を持つような発言。いつの間にか日本も核保有国になりましたなんてことも十分あり得る話です。

今年、97歳になる広島の被爆者の女性が、「今日のことは今日忘れるへろへろ婆でございますがね。原爆のことは忘れてしまいたいと思えば思うほど、はっきりと思い出すんですよ。やっぱり忘れてはいけないことなんだと気づくのに長い時間がかかりました」

平和記念公園は原爆が投下される前は広島有数の繁華街、大きな旅館や映画館があった場所。少女時代に原爆で亡くなった多くの友人と楽しい時間を過ごしたこの場所を歩くときは、いつも心の中で「ごめんね、踏んづけてごめんね」って謝りながら歩いているそうです。

今はもうすっかり変わり果てた広島の街並みを眺めながら彼女は短歌に綴りました。

「ひとたびは焼け滅びたる街を埋めビルの群れ建つ墓標かと思ふ」高いところから見下ろしたビルがお墓に見えたそうです。

明後日は、長崎原爆の日。7年前に訪れた「長崎原爆資料館」の被爆惨状の数々は今でも衝撃としておいらの記憶、記録として深く刻まれています。これからもひとりひとりが、決して諦めることなく平和に繋がる思いと行動を履行することこそが、亡くなった人達への責務だと思います。

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お空に浮かぶ綿菓子

2026/08/05
【第2214回】

いや、ここ数日は秋の気配すらする心地良い日が続いています。熊本の被災者の人たちと変わりたいくらいです。それにしても、この地震大国のケアの貧困さにはいつもながらガッカリしてしまいます。これだけ体験、経験しているのに事前に備えを怠っているとしか思えない。防衛予算が増大しているのに比べ、災害に対する意識があまりにも低すぎるこの国の政治、行政のシステムが露呈しているのに、いまだ鈍感な人たちに呆れかえっています。

村上春樹の新作「夏帆」読了。不可思議な感覚で、謎だらけ、そして恐ろしくすら感じるのに、今までの作品に比べ文章が読みやすく、一気呵成に読んでしまいました。無気味な気配を随所に挟みながら、読者の想像力を喚起させる手法は相変わらずだが、今回の作品ほどその想像力を揺さぶる範疇が広範囲でなんだか恐怖さえ感じてしまう。ファンタジーなのに、バイオレンス、その相反する領域を手玉にとる作者は、やはり只者ではない。精神の健康と不健康って何だろうなんてふと物語から個人的な思考に移行していくところも村上作品の魅力のひとつ。そして一体何を基準にして本当の事と幻想とを区別しているのだろう...
村上春樹は小説を書く時、あらすじなど考えないで書くそうです。即興に近いのでしょう。彼が音楽、特にジャズの愛好家であることから分かるような気がします。物語を描いている時、その描いている中で生を感じ取り、その景色を瞬時に垣間見ているのだと思います。まさしくジャズの演奏スタイル。ただの創作物ではなく、ある意味リアルな現実、その辺がこの作家が万人を魅了する所以なのかもしれませんね。

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ちびっ子盆踊り

2026/08/03
【第2213回】

先週の週末は、日本橋に出かけました。江戸時代から下町文化の中心地であり、今でも粋なお店が建ち並んでいます。小さな路地に紛れ込むとタイムスリップしたような感覚に襲われる瞬間があります。確かに、本や映像で見聞きする江戸下町の独特な雰囲気の趣がありますね。この日、日本橋社会教育会館で上演された朗読劇「私の下町―母の写真―」は内容もさることながら、この地に相応しい作品でした。昨年、亡くなられた劇作・演出家である福田善之さんの作品です。本人も日本橋で生まれ、おいらが上京した当時に観た「真田風雲録」「オッペケペ」「袴垂れはどこだ」は当時の政治の季節にマッチした斬新な庶民の革命劇でした。その後、春風ひとみ一人芝居「壁の中の妖精」はスペイン大好き人間だったおいらにとってはやられた!という衝撃的な作品でした。スペイン内戦当時、フランコ率いるファシズム一派に対し、徹底的に戦った人民戦線派である女性が壁の中に隠れながら過ごした記録劇。多種多様な人物を春風さんが一人で見事にこなしていました。おいらもプロデューサーとして企画したかった題材でした。

今回の朗読劇は春風さんが企画したもので、戦前、戦中、戦後に息づく庶民の姿を7人の俳優さんがリアルに演じていました。「空飛ぶドン・キホーテ」を終えたばかりの村井國夫さんも物語の進行役としての重要な役を淡々と、しかも説得力ある語りはさすがでした。

観劇後、やはりこの日本橋で一杯やらなきゃ治まらないでしょうということで「人形町寅次郎」に入店。暖簾をくぐり味わいのある座敷に案内され、久しぶりにドジョウ鍋をつつきながらのほろ酔い加減の締めの一日でございました。

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日本橋の一日

2026/07/31
【第2212回】

一昨日、久しぶりに浅草に行きました。いやまあ、この酷暑の中多くの観光客で賑わっていました。それも半分は外人の方々ですね。この暑さにもめげずレンタルの浴衣、着物を着こんで日本の夏を思いっきり楽しんでいる様にほっこりしましたね。

この日は、「浅草九劇」で朝倉伸二さんと小林美江さんの「ひとり芝居二本立て」を観劇。このお二人はご夫婦で、トムの芝居にも出演して頂いたことがある役者さんです。小林美江さんの演目は「朗独劇」、地元の友人から地域活性のために朗読のワークショップを依頼され、発表会に向けて稽古を始めるのだが、個性豊かな生徒たちに振り回される講師の姿を面白可笑しく演じるヒューマンコメディ。美江さんの明るさとテンポの良さで十分楽しめました。朝倉伸二さんの「サプライズ」、会社帰りに見たYouTubeでの全くピアノを弾けなかった父親が娘の結婚式に向けてサプライズ演奏に挑戦する姿に感動し、愛する娘の結婚式でサプライズを成功させたいと願う汗と涙と情熱の物語です。そのサプライズが、あの名曲「白鳥の湖」をバックにバレエを舞うためにレッスンする姿に大爆笑。朝倉さんの味のある演技を交えながらの舞台はなかなかのものでした。

ふたりの役者さんに共通することは、先ず芝居が達者であることに加えてふたりの人柄。人を愛してやまない気持ちが全身に満ち溢れています。役者である前に先ずは人としての研鑽をどれだけ積み上げてきたか...舞台上では、その人となりが間違いなく出ますから恐いですね。

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浅草駅からの眺め

2026/07/29
【第2211回】

昨日は、8月19日から上演する「沼の中の淑女たち」の稽古初日に行ってきました。この作品は2023年に創り東京、地方公演を巡演し大好評を頂いた演目です。五人の個性溢れる女優陣が舞台上を所狭しと動き回り、観客のハートを鷲づかみにいたしました。

天然で愛しさ溢れる羽田美智子さん、笑いのツボを知り尽くした柴田理恵さん、ミュージカルからシリアスな芝居までこなす阿知波悟美さん、トリッキーな雰囲気を備えた長尾純子さん、ここ最近めきめきとチカラをつけた森川由樹さん、この無敵の五人衆が一堂に会した舞台は面白いに決まってるでしょう!と自信たっぷりのプロデューサでござます。手前味噌ながらおいらがキャスティングしたんですから間違いござませんことよ。

この日は本読みを2回したのですが、皆さんノリノリのハイテンテンション、この日を待ってましたとばかりの現場でした。芝居の成否はチームワーク、どんなに有能な役者が頑張っても役者間の信頼がなければクオリティの高い舞台は生まれません。今回の5人の丁々発止のやりとりを観ていると、再演といいながらも新しい作品が誕生する予感さえしました。勿論、この個性溢れる女優さんを操る作・演出、田村孝裕さんのきめ細かく大胆な采配がよりいっそう面白くしています。

東京公演もすでに完売、8月21日(金)急遽14時の回、追加公演を決めました。見逃すと後悔しますから予約はお早めに!

稽古中に熊本地震発生の情報、被害が最小限に治まることを願っています。

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稽古場前からの眺め

2026/07/27
【第2210回】

先週の隅田川花火大会なんとか無事に開催され江戸の皆さんホッとされたでしょうね。ここ最近、酷暑のなか天候不順でいきなりの雷雨が続いています。今回の花火大会、主催者発表で92万ですから、千葉市や仙台市の人たちが全員集まったと考えれば大変なことですね。そんなところにドカーンと雷雨に見舞われれば大混乱。お洒落に着飾った浴衣姿のお嬢様がそれこそ可哀そうでございます。おいらも随分昔に参上したのですが、満員電車が苦手なおいらは二度と行く気にはなりませんでしたね。朝の通勤ラッシュが嫌で、会社勤めは一生NGと決めたおいらですから。

片や、フランス、スペインの火事の報道、こちらも大変です。ワイン好きなおいらにとってもただならぬ事態でございます。フランスボルドーのブドウ畑が煙に包まれた映像が流れていました。そしてマドリード州南西部で発生した大規模な山林火災、スペインに住んでいたときにこの近くで乗馬の経験があります。乾燥した地域が多く、この気候変動によりサハラ砂漠からの熱く乾いた空気がブロッキング高気圧によってイベリア半島に流れ込んだことが原因らしい。第二の故郷であるスペインの情報はとっても気になりますね...サッカーで世界一になったと歓喜に包まれた空気も今回の火災で一変しました。

元気なうちになんとか、もう一度スペインを訪れたいと思っていたのですが、この世界の混乱のなか自分だけ楽しい気分で旅なんて出来ませんことよ...一日も早く、戦渦が治まり誰しもが安心して日常を過ごすことが出来る日が来てくれることを願う日々でございます。

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新宿南口広場からの眺め

2026/07/24
【第2209回】

今日は若干暑さが和らいだのかなと思いきや、お日様が顔を出すとアッチッチ...そしてこれもまた夏の風物詩であるセミの鳴き声、今はまだ序の口、前座のセミが試し鳴きと言ったところかな。その鳴き声を聞いていると、一昨日の「空飛ぶドン・キホーテ」で満員の観客を魅了した村井國夫、山﨑薫の歌声が甦ってきました。戦場カメラマンとして、世界の紛争地でレンズ越しに被災地の子供たちを撮り続けながら地雷で命を落とした教授(村井國夫)の息子への鎮魂の旅に同行したハナ(山﨑薫)。無事に帰国していれば結婚したはずなのに...そんなストリーの中で語られる言葉と歌、おいらもこれまでいろんな出し物を拝見してきたのだが、今回のようなスタイルはどのジャンルにも属さない舞台ではなかろうか。

村井國夫という、ミュージカル界のレジェンドであり数々の舞台を踏んできた82歳なる一人の人間の生きざまが表現を通して凝縮された立ち姿であった。相手役を担った山﨑薫の凛とした姿も今回の舞台に弾みをつけたことは間違いない。彼女の歌も、これまでミュージカルで数多く観てきた女優さんとは明らかに違う、舞台女優としての矜持を感じた。

こんな素敵な舞台が誕生したときはプロデュサーとしては本望である。そして今回の舞台に関わった多くのスタッフに唯々感謝である。日々、葛藤を繰り返しながら初日を待つ緊張と不安と期待、このスリリングな感覚があるから芝居は止められないかもね...

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さすがの百日草

2026/07/23
【第2208回】

昨日は「空飛ぶドン・キホーテ」満員大盛況のうちに終えることが出来ました。村井國夫、山﨑薫という最強のコンビで世界を旅する歌をお客様に見事に伝えたと思います。「星に願いを」「虹の彼方に」「アメイジング・グレイス」「見果てぬ夢」「ひまわりのテーマ」「ぼくらのゆくえ」(オリジナル曲=内藤正彦・作)などなど、この混迷を極める世界に希望と祈りの曲で会場は心地よい雰囲気で満たされていました。

村井さんの渋く深みある声で語りかけるような朗読と歌は表現者としては最高レベル、82年の人としての年輪を改めて感じさせて頂きました。なかでも「マイウエイ」は彼の人生の歩みに寄り添うような絶唱。

相棒である山﨑薫さんの歌と語りも絶品、まだまだこの世界にはただならぬ傑物が居ることを見せつけてくれました。低音部から会場に響き渡る透き通るような高音、そしてハートが伝わるネイティブな英語、いやいやまいりました。

そして二人に寄り添うように演奏する松永裕平さん。アルゼンチンタンゴの研鑽を積んだリズムと秘めたる情熱をドラマの流れに則した伴奏は見事。激しいタンゴのピアノソロ「エル・チョクロ」が二人の心象を巧みにすくい上げていました。

この猛暑の中で、まさしく一服の清涼剤。この舞台、日本全国の皆さんにお届けできたらプロデューサーとして本望でございます。

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酷暑にめげないゼラニューム

2026/07/21
【第2207回】

サッカーのワールドカップもスペインの優勝で幕を閉じました。それにしても圧倒的な強さ、まったくスキがない今回のチームでした。アルゼンチンもメッシというスーパースターを擁し大健闘してはいましたが、この決勝戦ではまったくもって手も足も出ないという防戦一方の試合展開でした。ブラジルがサッカー王国なんて言われてますが、スペインの熱狂ぶりも半端じゃございません。おいらがスペインに住んでいた時には、サッカーは生活の一部でした。住み始めた時、白黒のテレビを買いチャンネルをひねると(40年~50年前のことですから)ほとんどがサッカーの試合の中継。その時に感じたことは、サッカーってこんなにスピード感があるスポーツだったのかと...日本での試合しか知らなかったので、そのあまりの違いにただただ驚くばかりでした。そして、アンダルシアの村の畑で拾ってきた子猫の行動にも目を白黒させられました。サッカーのテレビ中継が始まると、おいらと一緒に観戦するのはいいんですが試合が伯仲してくるやいなや、テレビの画面に進み前足でボールに触ろうとするんですから、何じゃこれ!この子もさすがにスペインの血が流れているに違いないと確信した次第です。

昨日は、明日上演される「空飛ぶドン・キホーテ」の最終稽古に行ってきました。村井國夫さん、山﨑薫さんの歌声と語り、松永裕平さんのピアノが、この連日の猛暑の中での一服の清涼剤になること間違いなしの仕上がりぶりでした。

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梅雨明けの空

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