トムプロジェクト

2026/04/10
【第2166回】

昨日は渋谷にある東急シアターオーブで「メリーポピンズ」を観劇。いやいやお金かけていますね。チケット代¥16500も仕方がないと言ったところですか。先ずはハリウッド映画でヒットし2004年に舞台化されました。日本では2018年に初演以来、今回が3度目の上演です。今回も英国クリエイティブチームとの綿密な対話を通し、表現の細部に至るまで研鑽を重ね創り上げたそうだ。それにしてもチェリー・ツリートレンの空から舞い降りるメリーポピンズのシーン、バート役が壁と天井を逆さに歩くシーンは冷や冷やもんでした。事故が起きれば役者は大怪我もしくは即死、まさに命懸けの演技でございます。

アンサンブルの人たちの一糸乱れぬダンスと演技を観ながら、いつか自分もメインで呼ばれる日を夢見ながら奮闘しているに違いない...ここが役者の道を選択した者の踏ん張りどころでございますので頑張ってと応援したくなります。

トムの芝居に出演して頂いている島田歌穂さんさすがでした。前半のバードウーマンの役では<鳥に餌>を絶唱、後半ではがらりと違ったインパクトあるミス・アンドリュー役を実に個性的でありながら、これでもかという徹底的に楽しみながら演じていました。

おいらがミュージカルを観劇して、いつも思うことは歌、踊りに力を注ぎすぎ肝心の芝居の部分が疎かになっていないか?つまり演じる側の内面に思いを巡らす分野にもっと心眼をそそいで欲しいということ。

歌穂さんがトムの「モンテンルパ」で、渡辺はま子役を演じて5年になります。再演を重ねるたびに歌穂さんの役作りの振幅度に役者魂を感じていました。昨日のミュージカルを観ながら改めて演じることの難しさ大切さを感じた次第でございます。

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時にはミュージカル

2026/04/08
【第2165回】

NTTが発行していた紙の電話帳「タウンページ」の発行が3月末で終了となりました。

感慨深いものがありますね。トム・プロジェクト立ち上げに際し大活躍したのが「タウンページ」でした。池袋のミニシアターで1994年に立ち上げた、岩松了作・演出による片桐はいり一人芝居「ベンチャーズの夜」を全国展開しようということになり電話作戦を敢行。演劇をやりそうなところを探すには全国のタウンページが必要不可欠ということで、当時新宿に構えていた事務所の一番近いNTTに出かけ、日本全国都道府県の冊子を借りる交渉に成功、チャリンコで10往復して事務所に運んだ記憶が懐かしい。チャリンコの前かごに溢れんばかりの冊子を何とかふらつきながら運んできました。演劇団体、公立の会館、演劇サークル、放送局などなど徹底的に調べ上げ3人で電話をかけまくり、興味があるところに資料を送り続けました。よしゃ!やったるでの気持ちさえあれば苦にならないどころかメラメラと燃えてくるもんです。おいらは昔から、人と同じことしていても面白くないという性癖を持っているのと、昔読んだ米沢藩主・上杉鷹山の歌「なせばなるなさねば成らぬ何事も」を妙に気に入っていて、即行動に移せば吉が出ることも十分予測できました。

資料つくりも狭い事務所で男3人、封筒に入れるペーパーを折り曲げるのにビール瓶を使いながらの細かい手作業。作業終わった後、近くの町中華での餃子とビールの味も忘れることのない思い出です。

おいらの勘ピューターはズバリ的中、最初の芝居は全国200ステージ近く上演し、夢を吐き続ける基盤を作ることになりました。本当にありがとうございました、そしてお疲れさまでした「タウンページ」様。

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ひっそりと咲いてます

2026/04/06
【第2164回】

ウクライナ東部ドネツク州の港湾都市マリウポリにあった「ドラマ劇場」が2022年3月のロシア侵攻により破壊されて4年が経ちます。その跡地に昨年12月にロシア当局がそっくりな形の劇場を建てたというニュースが流れました。その知らせを聞いたドラマ劇場の劇団員たちは皆そろって恐怖を感じ「建てるべきは鎮魂碑、彼らは殺された人々の歴史を消え去ろうとしている」と怒りをあらわにした。

生き残った劇団員は、「ドネツク州立マリウポリ・アカデミー・ドラマ劇場」という名で、マリウポリから直線距離1150㌔離れたクライナ西部の街ウジホロドで活動している。

避難後2024年3月には、当時劇場内で避難生活をした5人の俳優の証言に基づいた戯曲「マリウポリドラマ」をキーウで上演。その後、英国、ドイツ、イタリアでも巡演。稽古中には、俳優たちがリハーサルで自分の極限の経験をそのまま演じることに耐えられず、泣き叫ぶシーンはカットせざるをえなかった。

同じ演劇人として、この困難な状況下の中でも芝居を通して戦争の不条理に対し屈することなく闘ってる姿に頭が下がる思いだ。ロシアと言えば文学、演劇、バレエ、絵画などなど芸術の一等国としての歴史を持つ国として一目置かれた国であったはずだ。独裁者を選んだ国のその後はこれまでの歴史が証明しているのに、そしてアメリカ然り...力のある者が他者から奪う世界になっていいのか、正しいことをしている人たちが報われる時代が一刻も早く来て欲しいものだが...微力ながら、芝居屋は演劇を通して矛盾を正していくしかない。

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井の頭線高井戸駅

2026/04/03
【第2163回】

奇才のマンガ家・つげ義春さんが3月3日に88歳で亡くなった。若い頃に貪るように読みまくった「ねじ式」「「紅い花」「ゲンセンカン主人」「李さん一家」などなど、おそらく日本初のシュルレアリズム的マンガであった。つげ作品が選ぶ場所は、どこも裏通りか場末といったような小さな町や村の外れである。そこには得体の知れない人物が必ず登場し世にも不思議な物語が展開される。そして日本の土俗的な深層に読者を引きずり込んでいく超現実的な絵のスタイルがこれまた強烈、読み終わった後数日間脳裏から離れることがない。

温泉場のシーンがしばしば登場するのだが、観光地とか名だたる温泉はまず登場しない。ひなびた温泉、あるいは鉱泉宿とか、廃れた温泉ばかりだ。おいらが若い頃に頻繁に通っていた北温泉も登場する。那須温泉の奥深くにある北温泉の開湯は古く170年前、中でも元禄奈良時代の宝亀年間(770年頃)に大天狗が発見したと伝わる「天狗温泉」は幽玄の世界。

薄暗い浴室はそれだけでも鄙びた雰囲気ではあるが、壁に掲げられた天狗の面が何かを語りかけてくる不思議な世界観を醸し出している。もっと言えば畏れすらを感じさせる。室内外に子宝祈願の絵馬が数多く奉納されているのを見ていると、まさしくつげ義春の世界に踏み入れた感覚に陥ってしまう。この湯は混浴で、いつだったかおいらがひとり桃源郷の思いに酔いしれた時、湯けむりのなか女性と思しき姿がこちらに向かってきて天狗の面の下にゆるりと湯の中に...ジロジロと見たわけではないが50前後艶っぽい容姿、思わず、つげ義春の世界に迷い込んだ瞬間でもあった。

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善福寺川緑地公園

2026/04/01
【第2162回】

折角サクラが咲いたのに昨日、今日と雨模様、でも何とか踏ん張り頑張っていますね。

そんななか米国、日本で野球が開幕しました。これから10月まで試合結果に一喜一憂しなければと思うとなんだかしんどい気もします。ドジャースの圧倒的な強さに比べ、我がライオンズ開幕から2連敗。今年も下位争いの仲間入りかなと思いきや2連勝、昨日の試合なんぞは新人の3選手が大活躍し少しは希望が見えたかな?それにしても平日、しかも雨の中埼玉所沢の球場には満員のファンで埋まっていました。ありがたいことですね...そんな環境の中でプレーできる選手はほんまに幸せ者です。

一方、海のかなたでは日本人選手の活躍が早速伝えられています。村上、岡本選手のホームランもビックリ!おいらはそんなに簡単に打てるとは思ってはいなかったんですが、今どきの若者のメンタルの強さに感心しきり。開き直りの精神と、我が道を行く姿勢がうまくかみ合い結果を出していると思います。ライオンズから渡った今井投手は苦い経験をしましたが次回は必ずリベンジしてくれるでしょう。それにしても、日本のプロ野球はなんだかアメリカに渡るための予行演習ですかね...メジャーとの契約金の額を知らされるたびに、皆双六のあがりはここだと思っている節がありますね。確かに、いつどうなるかわからない不安定な環境の中、稼ぐときに稼ぎたいという気持ちはわかります。

ところで神経衰弱のトランプ、いいかげんに戦争やめんかい!こんな男に振り回されているこの世界、ほんとにやばいです。

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満開

2026/03/30
【第2161回】

昨日、無事に風間杜夫ひとり芝居「カラオケマンさすらいヘルパー」千秋楽を迎えることが出来ました。連日満員の観客を前に風間杜夫の魅力全開のステージでした。公演中に速達でO氏より一通の葉書が会館に届きました。

 

大好きな牛山明さんにまた会えました。芝居であることを忘れる実在感。まさに風間杜夫という俳優の存在を借りた実在の人物として舞台の上の登場人物を見ています。観客は一様に風間ファンイコール牛山ファンなのです。虚構を超えた熱い人情の男です。シリーズ全体を通じてそのバイタリティーは証明されていますが、その人格わざと役者が自分に憑依させたのではないかと思えるくらい自然な人物として我々に迫ってきます。だから知らず知らず観客は声援の声を上げているのです。まるで大衆演劇に没頭している客のように。この舞台に流れる現実感のある熱気がこのシリーズのもっとも魅力のあるところです。待ってましたと心の中で快哉を叫んでいる自分が居ます。人は自分の一生を演じて生きていると言いますが、この登場人物ひとりの芝居こそ現実を凌ぐ空間であると今回の舞台を見ながら実感しました。牛山明はどんな人生をこれから生きていくのか、そしてその日々を垣間見ることができるならきっと観客は満足のひとときを過ごせるのです。畢生の演目として実は我々観客が観る者が手に入れる満足です。楽しい芝居の贈り物をありがとうございます。

 

おいらも又、牛山明の今後を見たい観客のひとりでございます。

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井の頭線高井戸駅そばの神田川

2026/03/27
【第2160回】

風間杜夫ひとり芝居「カラオケマンさすらいヘルパー」無事初日を迎え、昨日で2ステージを終えることが出来ました。初日、2日目といずれも完売、当日券をお求めになるお客様に断るのに一苦労。それぐらいの人気作品になったことに感無量でございます。1時間20分、息切らすことなく疾走する役者風間俳優の姿に惚れ惚れしてしまいます。歌って、踊って、落語して、最後は「生きてりゃいいさ」を絶唱して幕を閉じる。来月77歳になる人間がここまでやってくれると、恐れ入り谷の鬼子母神でございます。

そして際立つのが笑いの連鎖、過去にひとり芝居でここまで客席を笑いの渦に巻き込んで芝居があったであろうか?登場しない人物とのやりとのなかで、微妙、かつ繊細な間合いを要しながら、さもそこに相手役が存在するような設定を自ら創り出す風間杜夫の達者な芸。

後期高齢者になって、ますます巧妙になっているので目が離せません。

ここまで書いちゃいますと、なんだか手前味噌だとお思いでしょうが、嘘だと思ったら自分の目で確かめるしかありませんね。

東京公演は29日まで。あまりにも好評で今年の秋、11月5日(木)6日(金)再演を決定した次第です。この混迷の時期、あくまで日本が戦争に巻き込まれず、ひとまず平和であればの話ですが...それにしても神経衰弱という病に陥ってるトランプ困ったもんですな。

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絶賛上演中

2026/03/25
【第2159回】

今日は花曇り。そして、風間杜夫ひとり芝居「カラオケマンさすらいヘルパー」の初日です。サクラが咲き始めた頃の公演は久しぶりではなかろうか...何だか気分も浮き浮きしちゃいますね。

先日、57年前の劇団青俳で知り合った友人達と久しぶりに逢いました。男性5人、女性3人、さすがに歳はとりましたが、それぞれに昔の面影をほんのりと残しながら皆意気軒昂でした。今だからこそ話せる秘密の恋愛ネタも興味津々に聞いていましたね。やはり、若い頃にアートに夢中になった人たちは歳を重ねながらも青春しているなと...貧しくとも、がむしゃらに己の夢に向かって邁進してきたすべてが血となり肉となったんでしょう。ふと今一度、あの日あの時に戻ってみたい気もしますが...今更、懐古趣味ではないですが昭和の活気あふれた面白さは別格だったのではなかろうか。

まさか21世紀には戦争は無くなるのではという淡い願いも空しく、この現状に絶望に近いものを感じています。でも、この愚かな人間もなぜか何度も危機を乗り越え再生に道を切り開いてきました...まだまだ諦めてはいけません。そのヒントはアートの世界にいくらでもあると思っているのですが...なにせ時の権力者があまりにも芸術の世界に疎い点が残念でなりません。つい先日も、この国のお偉い方々が、博物館、科学館などの維持費を大幅にカット。もちろん、残念ながら演劇に対する理解もかなりハードルが高いですね。

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あちこちで

2026/03/23
【第2158回】

先週の週末は、東京芸術劇場にて劇団印象「藤田嗣治~白い暗闇~」を観劇。日本でも人気のある藤田嗣治の人生のなかで、乳白色の肌という独自の技法を確立し成功したパリ時代(1913年~29年)と、日本に帰国後、トレードマークのおかっぱ頭を丸刈りにし、軍部の協力要請に従って『アッツ島玉砕』等の戦争画の創作をしていく太平洋戦争時代 (1938年~45年)を取り上げた評伝劇。今年で藤田嗣治生誕140周年にあたるそうだ。

思い起こせば、戦争中に軍部の意向に沿い協力した芸術家は多数にのぼる。当時の趨勢からみても、軍の意向に背けば即思想教育の名のもとに逮捕される状況に置いて逆らうことは出来なかったのでは...中には強固な思想、信念を貫き通し命を落とした人達も少なからずいたことも事実だ。戦後、戦争協力者として生き長らえるしかなかった芸術家の葛藤は壮絶な日々であったに違いない。多くの人達も絵画の前に立ち、その本人の過去の歩みを鑑みながら様々な思いを持つに違いない。はなから戦争協力者として、どんなに芸術性が高い作品でもあっても否定する人。あの過酷な戦火の中、命あっての作家であることに共感し、様々な思いを巡らせながら作品に対峙する人。

どんな作品であろうと表現されたものにはその人の人間性が間違いなく加味されている。作品を鑑賞してから人物像に迫る楽しみ方と、人物に興味を抱き作品に向かう人...アートにはいろんな楽しみ方があるのでございます。

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今年も咲きました

2026/03/18
【第2157回】

WBCはベネズエラがアメリカを撃破し、初のチャンピョンになりましたね。侍ジャパンが敗戦したときに、このチームは強いと思いました。選手の一人一人のモチベーションの高さが半端じゃありません。あの凶暴な男に国の大統領を拉致された悔しさも含めてアメリカに戦いを挑んだ気がしました。貧しい国が大国を打ち負かすことほど心地よいものはありません。

一時、同点ホームランを打ち本塁ベースを踏む寸前にユニフォームに縫い付けられた国旗を指さしながら、ベネズエラのベンチに向かって「ざまみろ...」と吠えていたアメリカの選手の表情に大国の驕りを感じたのはおいらだけかな...あれだけの一流選手を揃えても勝てない理由の一つを見せて頂いた気がしました。

今回のWBC期間中に起きたイラン攻撃、国の一大事に呑気に野球を楽しんでいて大丈夫?

アメリカ国民の心情も複雑ではないのかなと...そして今日もスタンドには多くの日本人が観戦していました。日本が決勝までいくに違いないと確信し最終戦までのチケットを買い占めていたに違いありません。球場の広告スペースのほとんどが、これまた日本企業。残念ながらこれも見込み違いでございました。

そして今回問題になっているのが、ネットフリックスでの独占放送。これは野球人口を減らす逆効果、今まで野球に関心がなかった人達に野球の面白さを知って貰うチャンスだったのにと残念に思います。一次予選から決勝までのブロックの分け方も透けて見えてしまいますね。決勝は米国と日本が戦う振り分け方も釈然としません。金がチカラと信じている人達に、もう一度何が大切なのかを考えてもらうWBCだったかも知れませんね。

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弥生の夕暮れ

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