トムプロジェクト

2026/09/09
【第2228回】

「ヒンドラ・ラジャブの声」を鑑賞。2024年1月、パレスチナ人少女のヒンドラは、親戚と車で避難中にイスラエルの銃撃を受け、彼女以外が命を失う中、人道支援組織「赤新月社」の通報センタースタッフは携帯越しに彼女を励ます緊張したシーンから映画は始まる。実話であるガザの悲劇から目を背けることなく、凄まじい臨場感を伴って瞬間を持続させる映画人の魂に心打たれる。全編をこの作品の背骨を貫くヒンドの声は心電図モニターと併せて、まさしく命の灯の如く観る者の目と耳の両方に強く訴えかけてくる。

事実をフィクションという手法で創り上げる方法には危うさも含まれている。地獄の最中に少女の声を流すことによりサスペンス効果を狙っているのではないか?再現ドラマにある感情の誘導や、事実の書き換えなどなどドキュフィクションにありがちな不安を見事に払拭したチュニジア出身のカウテール・ベン・ハニア監督の批判も恐れず、倫理と演出力で押し切った勇気と力技に拍手を送りたい。

しかしながら、劇中のスタッフの無力感は、惨劇を前にしてなすすべもない今の世界の縮図である。この思いが大きな力となり独裁者が引き起こす世界の惨状を一日も早く終結させるひとつの引き金になればとの思いと、無力感を祈りに変えながらガザの犠牲者を悼む象徴的な映像の墓標を打ち立てたことは間違いない事実である。

プーチン、ネタニヤフは明らかに戦争犯罪人であり、裏で小賢しく動きまわっているトランプも同罪かもしれない。彼らにこの映画を観てもらいたいところだが、残念ながら不感症の彼らには何も感知しないに違いない。

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つかの間のはれ間

2026/09/07
【第2227回】

何だか天候不純の日々が続き、皆さんの心は千々に乱れなんてことになっているんじゃないかしら?天気ってやつはすべてにおいて影響を及ぼすもんですね。平穏無事がなによりです。おいらの家の近くの大型スーパーマーケットが29年の幕を閉じました。おいらは25年間お世話になったかな...子供の頃はデパートが夢の遊び場でした。百貨店と言うくらいですからあらゆる品物が所狭しと陳列され見ているだけで腹一杯になりました。博多でいうと岩田屋、玉屋だったかな、おいらの住んでいたところで一番近かった中洲の玉屋は暇があれば出かけていました。あれも欲しい、これも欲しいと思ってもお金はありませんからメン玉ぎらぎらさせながら欲しいモノを少しでも長く眺めていました。あまりにも長く店頭に座り込んでいるので恐いおばちゃん店員に注意されたこともありました。

品ぞろいが多い店は大人になっても楽しい場所ですね。お世話になったスーパーもマンションから2分で行けるところなので用と時間があればぶらりと覗いていました。その日の生鮮食料品なんぞを見ていると今の日本経済が見えてきます。地下に行くと日用雑貨から電気用品、衣料品、そしてなんとカメレオン、蛇など爬虫類までの品揃え、勿論、犬、猫も販売していました。なかなか飽きが来ない商いをしていましたね。そして面白いのが買い物に来ている人達の人となり。買い物の仕方にも個性があり、じっくり観察していると一本のドラマが誕生するんじゃないかしら?賞味期限に拘り陳列棚をぐちゃぐちゃにする人、迷いに迷いなかなか決断できない人、試食を何回も試す人...何でもない日常にドラマになるヒントが散らばってますね。

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スーパー閉店前日の空、店の横から

2026/09/04
【第2226回】

昨日は杉並区敬老会に行ってきました。今年で76回目という歴史がある会です。おいらも杉並区民になって26年かな、それまでは新宿、渋谷辺りに住んでいたのですが、何となく杉並をぶらりとした時に緑と河川に恵まれた環境が気に入り住むことになりました。現在住んでいるところの近くに流れる神田川、善福寺川付近は散策に相応しいエリアです。

今回の会は女性の区長である岸本さんの挨拶で始まり、日本フィルハーモニー交響楽団 弦楽アンサンブルによる演奏と、ソプラノ歌手として活躍されている野々村綾乃さんの歌声を聴かせていただきました。会場には75歳以上のお年寄りの方々でぎっしりと埋まっていました。9月2日~4日までの3日間、一日3ステージの超過密スケジュール、演者の皆さん本当にお疲れさまでした。おいらの隣の80歳くらいのおばあちゃま野々村さんのラストの歌「ふるさと」で泣いておりました。プッチーニの歌劇、サラ・ブライトマンで有名な「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」の時には身を乗り出すように聴いておられました。

弦楽アンサブルが奏でるヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲<四季>よりの「秋」の心地良い演奏も、長い人生を生きてきた観客には暫しの癒しの時間であったと思います。

会場の杉並公会堂は日本フィルハーモニー交響楽団のフランチャイズホールで、本格的なクラシックコンサートを前提に設計されたホールであり、指揮者の小林研一郎から「まったく死角のない素晴らしい響き」と評されています。住んでいるエリアが緑と文化に彩られているなんて贅沢の限りです。もしや、この杉並区おいらの終の棲家かな?と思ったりしましたが、やはり人生一寸先は闇でございますね。

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杉並区の鎮守様

2026/09/02
【第2225回】

博多に帰省した時、必ず寄るお店があります。1969年から続く天神南のジャズ喫茶「JAB」

今回も足を延ばしたのですが、いつもの店主が不在でした。新しく変わった40代くらいのマスターに聞いて見ると、1年半前に退職されたとのことでした。地味ながら余計なお世話もすることなくジャズの店にはぴったりの人でした。この店の良いところは、時流に乗ることもなく昔ながらのジャズ喫茶の流儀を貫いている点ですね。このご時世に一杯¥600のコーヒーを飲みながら、いまやなかなか手に入らない貴重な名盤レコードを大音量で聴けるなんてまさしく至福のひとときです。夜もチャージ料なしでお酒を片手にカウンターで読書しながら過ごしている男女の姿も様になりますね。時折、物珍しさで入店しカレーなんぞを食べて去っていく人も居ます。多分、何かの情報で知り覗いたんでしょうが、やはりジャズを主として来ていただきたいなと、勝手にジャズ愛好家としては思っとります。

帰りに新マスターといろいろ立ち話をしたのですが一言「東京に染まらんでくださいね...」なんとも意味深な言葉を掛けられました。上京して62年、もうすっかり東京人になっちゃったことを察しての言葉なのか、まだまだ博多っ子純情の面影を残している感があってのアドバイスなのか...なんとも複雑な思いで店を出ました。

大きく変貌する博多の街、「JAB」みたいな店がいつまでも存在する街でありますように。

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「JAB」店内

2026/08/31
【第2224回】

「沼の中の淑女たち」8月28日の博多公演、多くのお客様が駆けつけてくれました。おいらの小学校の同級生、何十年ぶりに会った従妹たち、今は無き六本松「ひろ」での飲み仲間であった友人たち、マスコミでお世話になった方、嘗て活動していた福岡シアタークラブの会員様、エルガーラホールの元支配人、弟が住むマンションの住人の方々などなど懐かしい顔ぶれが勢ぞろい。勿論、今回の芝居の企画そのものに惹かれ来場してくださった新しいお客様。演劇観客が減少している昨今、本当にありがたいことです。この日が旅公演初日であった出演者も緊張しながらの演技ではあったのですが、お客様の温かい声援でノリノリの舞台でした。終演後、役者さんと一緒に食事をしたのですが博多のお客様の反応が良く楽しく演じることが出来ましたとご機嫌でした。29日の福岡八女、30日の熊本長洲での公演も無事終え今日は9月1日の長崎佐世保公演に向けての移動日。その後岐阜県、兵庫県、岩手県、群馬県、福島県、北海道を経て10月10日の石川県金沢市で千秋楽。この猛暑の中、大変な旅公演でございます。でも各地で楽しみにしているお客さがが首を長くしてお待ちになっていると思えば役者冥利に尽きると思います。

昨日は、25年間ライオンズ一筋でプレーした栗山功選手の引退試合がベルーナドームで行われました。いや、恰好良かったな...ライオンズは多くのスタープレーヤーが他球団に移籍する歴史があったなか、ライオンズ愛を通してきただけでもあっぱれであり、ライオンズで唯一2000本安打を達成した人気と実力が伴った選手でした。将来はライオンズの監督になるのではないかと思います。栗山選手はストイックで努力の人だった...自分が流した汗はけっして裏切ることがありません。

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8月終わりの空

2026/08/28
【第2223回】

「沼の中の淑女たち」の地方公演で博多に来ています。おいらの故郷なんですが、恥ずかしながら福岡県議会では、正副議長ポストを巡って金銭授受が行われていたというとんでもない疑惑が表面化しております。関係する県議たちが「カネを支払った、いや受け取っていない」と「ポストをカネで買う」なんてみっともない醜聞。福岡というところはいろんな顔をしていますね。炭鉱全盛時代は北九州、筑豊の人たちは「川筋気質」と呼ばれていました。舟運の船頭や坑内の労働者、港湾で積み下ろしに携わった人々の間に育まれた、独特な気風と精神性。義理人情に厚く、理屈より行動、気っぷがよく宵越しの金を持たないなんて一見格好よく見えますがこの時代にはとても似つかわしくないと思います。こんな流れを行政に関わる連中が連綿と受けついているなんてとんでもない話です。

一方、商人の町である博多もなんだかつまらない街に変貌しつつありますね。天神に立ち並ぶ高層ビル、昔ながらの情緒ある佇まいの街並みが少なくなっています。これを推進してきた現福岡市長もようやく辞めるそうですが...芝居を含め、ライブをやれる施設を作ることなく金儲け第一主義でやってきた福岡市の行政も何をかいわんやと言いたいですな。多くの芸能人を輩出しておきながらこの体たらくぶりは恥ずかしい限りです。

さて、今日は久しぶり福岡県立ももち文化センターでの公演、よか芝居ばお観せすることが出来ると思っとります。

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博多中洲の夕暮れ

2026/08/26
【第2222回】

一昨日、「沼の中の淑女たち」無事に東京公演を終えることが出来ました。連日の超満員で役者さんたちもテンション上がりっぱなし、それにつられてお客様も笑いの連鎖、そして思わぬ展開、1時間40分があっという間に過ぎて、楽しそうなエンディング。初めて芝居を観る方もなんだか芝居の沼にハマりそうな6日間でした。

今回の公演中に、トムの芝居にも何度も出演していただいた斉藤とも子さんから一冊の本が贈られてきました。タイトルは「十六歳 父が残した命の手紙」、とも子さんのお父様が十六歳の時に、敗戦で逃げ惑う朝鮮半島での十か月近い避難生活を過ごした手記をもとにした話です。昭和二十年八月十日、ソ連軍の侵攻以降、学友や教師たちと命からがら逃げるさなかに出会った人たちとの交流、そして湧き上がる思いをポケットに忍ばせた手帳に記録したそうです。なかでも、嘗て朝鮮半島に侵攻し多くの朝鮮民族に酷いことをしたにもかかわらず、乞食同然の境遇であった避難民を自宅に招き優しくもてなした方のエピソードは胸迫るものがありました。そして彼はこう言った「君は、今は乞食となって恥を忍んでも、自己の生命を持続し、内地に帰って日本の再建に尽くそう、というような熱意を心のうちに持っているかね」と...昭和二十一年五月末に奇跡の帰国を果たした斎藤三郎さんは、患者さんの良き理解者であった医師として八十五才の人生を全うされました。

とも子さんは女優をやりながら、原爆被爆者との交流を通じて平和運動に並々ならぬ活動をされています。きっとお父様のこの貴重な体験があったからこその生き方ではないかと思います。

おいらも実は、引き揚げる母のお腹に命を宿していました。生前、母が語る壮絶な引き揚げ体験、昭和二十一年二月、博多に奇跡的に引き揚げ命を授かりました。母は口酸っぱく何度も口にしてました。「戦争は勝っても負けても悲惨...この世で絶対やってはいけないのが戦争」なのにいまだ止まない戦争、人間はどこまで愚かな生き物なんでしょうかね...

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この夏、最後のひと鳴き

2026/08/24
【第2221回】

一昨日の夜中に首都圏で震度4の地震、大きな揺れに一瞬、今日の芝居は中止か?なんて思っちゃいました。プロデューサー稼業は因果な仕事でございます。稽古、本番中は気が休まることがない。昨日でなんとか6ステージ終えることが出来ました。そして、いつものように一枚の葉書にびっしり書き込まれたO氏の感想文が速達で届きました

 

今回の再演、相変わらず冴えた演劇空間を創りあげる作・演出(田村孝裕)家だと今更ながら実感した次第です。3年前の初演の感想に「今を切り取る天才だ」と書いた気がします。「沼」というイメージをまた「推し」という現象を演劇の表現の中で見事に具体化してみせる手法に感心したからだと思います。再演はその想いはそのままに役者各位の存在そのものにまで踏み込んだ感を強く持ちました。時代のブームや流れを敏感に取り込むことは勿論すでに実証済みですが、舞台上の女優陣ひとりひとりの沼感や推し活動が実感できる展開だったように受け取りました。それはまた演じてる役柄の吟味と理解がこの芝居に関係する各位に深まっていることの証のようでもありました。実際、初演の感想は現実の流行を表現することに長けた舞台であったという思いが強くあったのですが、再演はその現実が登場人物ひとりひとりに如何なる生き様をするはめになっているのかを、じっくり語って聞かされた気になりました。芝居の現実の空間での虚構を紡ぎ出してみせる魅力が実に見事に目の前に繰り広げられる面白さにまた我を忘れ見入ったひとときでした。

 

今日が東京での公演の千秋楽です。最後まで無事終えることを祈るのみですね。

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昨日の終演後のトークショー

2026/08/21
【第2220回】

「沼の中の淑女たち」、昨日で2ステージ無事終えることが出来ました。初日はさすがに役者さんも緊張するのは当たり前でございます。どんな名優であろうとも人間なんですからね。その緊張と堅さも初日ならではの味わいがあります。芝居通の人は初日を観劇し、その芝居が好みであれば千秋楽を見届けて自分なりの評価をするといいますが、実際そこまでお気に入りの芝居がないのも事実です。なんでもありのこの時代、ナマモノの芝居にどれほどの価値を見いだせるのか?このあたりも当事者としてはなかなか悩ましいモノがあります。

この2日間、吉祥寺シアターに足を運んで頂いてるお客様、チョイと違うな?と思っています。実は、この吉祥寺シアターがオープンした2005年の開館公演は、トム・プロジェクトの「カラフト伯父さん」なんですよ。初代の支配人が、「混沌とした渦巻きある劇場空間を創出したい」ということでトムを指名してくれました。それから21年、地元に根ざした劇場として発展してきました。この2日間、都心で見かける客層と地元の方々がほどよく混ざり合いなんともいえない雰囲気を醸し出していました。

劇場を後にするお客様から「この芝居、何度見ても楽しめるね...又、観たい!」なんて声を掛けられるとプロデューサーとしては嬉しくなっちゃいます。息苦しい世の中ですから、せめてもの劇場に足を運んで頂き思い切り腹を抱えて笑うなり、共鳴するシーンがあれば心して感傷に浸って頂きたい...劇場は激情が渦巻く特権的な拠り所ですから。

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吉祥寺シアター

2026/08/19
【第2219回】

昨日は、今日から始まる「沼の中の淑女たち」の舞台稽古に行ってきました。武蔵野市にある吉祥寺はいつも住みたい地域のベストスリーに入る人気のエリアです。若者にも年寄りには優しい商店、レストラン、居酒屋が所狭しと建ち並んでいます。勿論、マイナーな映画を上映する映画館、話題の映画を並べるシネコンが存在するのも魅力です。新宿、渋谷、銀座に行かなくとも満足できるスポットがこれだけ揃っているので、いつも道行く人で溢れています。なかでも蔵元居酒屋「清瀧」はお薦めですね。埼玉にある清瀧酒造が経営している大衆酒場で、特筆すべきは純米辛口「伝」は最高、そして升のなかが溢れんばかりに注いでくれて、なんとお値段は¥380、こりゃしびれますばい。食べ物も新鮮な食材を手間暇かけて出してくれるのでたまりません。新宿にもあったのですが5年前に閉店してしまいました。池袋の本店は昔ながら、この土地に相応しい佇まいで営業しています。なんだか「清瀧」の回し者みたいになっちゃいましたが、こんな店がある限りまだまだ東京も大丈夫かなと思ってしまいます。ついでにもう一軒紹介しちゃいましょう。札幌に本店がある「串鳥」炭火で焼き上げる多彩な串に〆に食する釜飯、そして北あかりの芋も絶品です。ゆったりししたカウンターで飲む日本酒「富貴」なかなかいけますね。値段もなんと¥290...いつも安い酒ばっかり飲んでるみたいですが、最近、日本酒ブームにあやかってのぼったくり値段に呆れかえっていますので、この美味しい酒を良心的な値段で提供してるお店には敬意を表します。なんでんかんでん値上げが当たり前になっているこのご時世、庶民の味方の店舗は応援したくなるのは当たり前でございます。

ところで、肝心の舞台稽古の感想はと言いますと「面白いに決まってるでしょう!」でも、観たくてもチケット完売でごめんなさいね。

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昨日の舞台稽古

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