トムプロジェクト

2025/05/09
【第2032回】

最近は邦画を観に行くことはほとんどないのですが、「侍タイムスリッパー」は久々に面白かった。映画にしろ、テレビにしろ、日本の製作者は志なんてものほとんど感じません。話題になっているコミック、アニメばかりに目を向けて良質の作品を創ろうなんて意気込みがないのでおいらにとっては関心外の範疇。世代的にも数々の名監督による名作を観てきただけに余計悲しくなっちゃいます。勿論、採算とれないと難しい面もありますが、せめてもの映画人としての矜持だけは持って頂きたいですね。

その点、今回の作品には映画愛が画面からビシバシと感じられます。安田淳一監督は映画監督と米農家をやっている二足のわらじ、一時的に通帳の残高が¥7000までになったこともあるそうだ。作品のベースには退潮してゆく時代劇と、それでもそれを支える数多くの人々、そして忘れてならない日本人のスピリッツに対する熱い思いが込められています。

そして決してシリアスにならず、コミカルさを万遍なく盛り込んでいること。社会生活においても真剣になればなるほどこぼれ落ちる可笑しさに多くの人は共感を覚えます。語り継がれる名作に共通している点ですね。そして、低予算のインディーズ映画が、盛りだくさんのお金をふんだんに使った作品を蹴散らして賞を獲得したことも痛快極まりない出来事でした。

何事も、創る側の強固な信念、そしてユーモア、劇場に集う生活者の肌感覚...すべてを投げ出す覚悟じゃないとそうは問屋が卸さない世界であることは間違いございません。

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アンネのバラ

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