トムプロジェクト

2025/05/14
【第2034回】

今、NHK朝の連続ドラマのモデルになっている、やなせたかしさん。「あんぱんまん」でお馴染みの無私の精神で生涯を終えました。彼は雑誌「詩とメルヘン」の編集者でもあり詩人でした。彼の発する言葉はことごとくシンプルです。「花は決して理解できないような咲き方はしない」「風は決して難解に吹かない」そして奥が深い。そしてすべての人に対し「喜怒哀楽があれば誰でも詩人だ」と言い切っている。生活の中に詩なるものがいくらでも転がっている。それを見いだせるかどうかはその人の感性、好奇心にかかっている。

 

昨年亡くなった谷川俊太郎の詩集を時折開いている。彼の描く世界は宇宙的な規模で展開されている。中でも、全編ひらがなで書いた詩は彼の真骨頂、

 

ふつうのおとこ

 

ふつうのおとこが いたってさ

ふつうのめはなに ふつうのあし

ふつうのずぼんに ふつうのうわぎ

ふつうのあめふる ふつうのばんに

ふつうのやきもち ふつうにやいて

ふつうのなみだを ふつうにこぼし

 

ふつうのおとこは ふつうのひもを

ふつうのおんなの ふつうのくびに

ふつうにまきつけ ふつうにしめた

 

変幻自在な言葉の音楽性、おかしさと、怖さ、詩人が生きることにたいして全感受性を解き放ち森羅万象に大あぐらをかいている様が見えてくる。

 

最後に、やなせさんの言葉。

「天才であるより、いい人であるほうがずっといい」

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ぽっかりそらが

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